男の尿トラブルの主犯は前立腺肥大、ちょい漏れは会陰部指圧で解決!
第3回 男性の尿トラブルはこう解決
伊藤和弘=フリーランスライター
40代以降の男女が悩む「頻尿」「尿漏れ(尿失禁)」の原因や、セルフケアのコツを紹介する本特集。第3回となる今回は、男性に多い尿トラブルの解決法を永弘クリニック院長の楠山弘之氏に聞いていく。男性の場合、大きな原因となっているのは、尿道を取り囲む前立腺の肥大だ。
尿道がわずか3~4cmしかない女性に比べて、男性の尿道は20cm前後と長い。そのため、男性は、女性のように、ちょっと腹に力が入った弾みに漏らしてしまうこと(腹圧性尿失禁)は少ない。逆に「出にくい」「尿道に尿が残る」といった症状が起こりやすくなる。
そのような男性の尿トラブルは、60歳を超えると増えてくる。「大きな原因となっているのは前立腺の肥大です」と永弘クリニック(埼玉県新座市)院長の楠山弘之氏は指摘する。
第1回(「頻尿、尿漏れ、尿が出にくい…増える尿トラブルの正体は?」)でも説明したように、前立腺とは膀胱のすぐ下に尿道を取り囲む形でついている男性特有の器官だ。なぜかこれが年を取ると肥大してくる。60代で60%、80代になると90%もの人に肥大が見られるというから、年を取ればほとんどの男性が肥大すると考えていいだろう。
前立腺の肥大によって内側の尿道が圧迫され狭くなる
前立腺の肥大自体は、がんのように命にかかわるものではない。しかし問題はその内側に尿道が通っていること。そのため前立腺が肥大すると尿道が圧迫され、尿に勢いがなくなったり、排尿に時間がかかったりするようになる。膀胱が刺激されて、突然強い尿意に襲われる(尿意切迫感)こともある。排尿後も膀胱に尿が残り(残尿)、排尿後もなんとなくスッキリせず、不快な残尿感に悩むこともある。
このように、前立腺が肥大した結果、様々な尿の症状が引き起こされると、前立腺肥大症と診断される。
厚生労働省「患者調査」によると、2014年の時点で前立腺肥大症患者は約51万人に上る。「前立腺肥大症と診断されても、肥大の程度や尿の症状が軽度であれば、特に治療をせずに経過をみることもあります。ただし、進行すると、膀胱に残った尿が細菌感染を起こしたり、結石ができるリスクが高くなるので要注意です」(楠山氏)。最終的には尿閉といって、「膀胱がパンパンなのにオシッコが出ない」という恐ろしい事態を招いてしまう。
前立腺肥大が気になる人は、第1回で紹介したチェックシート(国際前立腺症状スコア〔IPSS〕)を試してみよう。尿の症状の程度が軽く、生活に支障をきたしていなければ必ずしも受診の必要はないが、重症と判定される20点以上だったら、すぐに泌尿器科に行ったほうがいい。「オシッコにかかる時間の長さ」も目安になる。排尿が終わるまでに30秒以上かかるようなら肥大が進んでいる可能性が高い。
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