生涯現役の体を作るなら、股関節やお尻を「きくち体操」で強く!
第3回 下半身を鍛える腹筋は「おへそを見るだけ」でOK
新村直子=医療健康ジャーナリスト
健康寿命を延ばすためには、いつまでも自分の足で歩けるように下半身を鍛えておきたい。だが、具体的に何をやればいいのかというと、分からない人も多いのでは。そこでお勧めなのが、忙しくて運動を後回しにしてしまうビジネスパーソンでも気軽に取り組める「きくち体操」だ。続けることで、誰でも無理なく自分で自分の体をよくしていける。84歳の創始者、菊池和子さんに、股関節やお尻に力をつけて、強い下半身と疲れにくい体を作る方法を手ほどきしてもらおう。
第1回 体への意識がガラリと変わる! 健康寿命を延ばす「きくち体操」
第2回 腰痛、五十肩、不眠で悩むなら「きくち体操」で上半身を動かそう
第3回 生涯現役の体を作るなら、股関節やお尻を「きくち体操」で強く!
いつまでも自分の足で歩くためには「股関節」を強く!
この特集では、多忙なビジネスパーソンでも気軽に取り組めるきくち体操を、創始者の菊池さんに紹介してもらう。前回は、五十肩や腰痛、猫背が気になる人、ストレスで自律神経が乱れ気味という人にぜひ試してもらいたい、手や腕の動きや、上半身に“力をつける”体操を教わった。
最終回となる今回は、健康寿命を延ばすために、股関節や、大臀筋(大殿筋)などお尻の筋肉に力をつけて下半身を強くし、疲れにくい体を作ることがテーマ。いつまでも自分の足で歩ける体をキープしたい、という人は必見だ。
そろそろ定年が視野に入るような年齢になっても、そこからがまだまだ長いのが人生。「生涯現役で働き続けるために、健康寿命を少しでも延ばしたい。そのためには、いつまでも自分の足で歩けるよう、下半身だけでも鍛えないと。とはいえ、スクワットは何度か試したけれども、果たして、効果はあったのかな…」という読者も多いだろう。
いつまでも自分の足で歩けるようにするために、きくち体操で重視しているのは、股関節回りの筋肉に力をつけ、股関節を柔らかく保つことだ。
デスクワークで長時間同じ姿勢をとりがちなミドル以上のビジネスパーソンは、そもそも股関節が硬くなりがち。その結果、脚を左右に開く「開脚」が苦手な人が多い。しかも股関節は、前回お伝えした背中などと同様、日ごろなかなか“意識を向けにくい場所”だ。
菊池さんはこう話す。「股関節は骨盤と大腿骨との重要な接点。この股関節が骨盤から斜めに大腿骨につながっているからこそ、私たちは立つことができます。斜めになっている部分の長さ、角度、太さの絶妙な関係で、頭蓋骨も含めた上半身全部の重さを、左右の股関節2点で支えられているのです。いつまでもさっそうと歩ける体でいるためにも、股関節は特に弱らせないよう、意識を常に向けていてほしいですね」
医師で東京有明医療大学教授の川嶋朗さんは、「座っている時間が長いことなどにより股関節周りが硬くなると、リンパや血流が滞り、老廃物がうまく排出されにくくなります。男性の場合、加齢により前立腺肥大が増えてきますし、尿道が狭くなって頻尿などの尿トラブルを招いてしまうこともある」と指摘する。尿トラブルの予防のためにも、股関節は柔らかく保っておきたい。
さらに、股関節や下半身に力をつけることにより、加齢による膝痛や腰痛への効果も期待できるという。川嶋さん自身、50代で変形性膝関節症を経験したが、「セルフケアで股関節や太ももをトレーニングし、痛みを克服できました。膝や腰の痛みを予防するためにも、股関節や下半身に力をつけることの重要性を痛感しています」と話す。
もう年だし、昔から体は硬いから…と諦めずに、きくち体操で股関節を動かしていこう。まずは、イラストのように、床に座って片足を持ち上げ、足首、膝が曲がらないようにして、股関節から脚を回していく。持ち上げにくい人は後ろに手をついてもいい。できるだろうか?