筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回のテーマは「筋トレで負荷をかける際の呼吸」について。一般に負荷を上げる時は、息を吐くようにしますが、これはなぜでしょうか。
筋トレで負荷を上げる時は、「息を吐く」のが基本です。これは体幹を固定するためです。体幹――とくにおなか周辺は、ベンチプレスでもスクワットでも、力を伝達する上で中心になります。中心がグニャグニャしていたら、重いモノを持ち上げることはできませんので、しっかりと固定しなければいけないのです。おなかを意識しながら息を吐くことで、腹筋が収縮し、体幹が固定されます。

ただし、ある程度のレベルを超えた重さになると、息を吐いただけでは上がらなくなります。そこで大きく息を吸い込んでから、息を止めて力を出す。これを怒責(どせき)と言います。おなかの中にある風船をギュッと押しつぶすようなイメージですね。すると、息を吐くよりも体幹が硬くなり、極限に近い負荷を持ち上げることができるのです。
怒責をすると、顔が赤くなり、血管が浮き出てきて危なそうな感じになります。おなかの圧力と血圧はイコールですから、血圧も上がります。スクワットのような種目だと、収縮時の血圧が350mmHgぐらいまで上がることもあります。