筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回のテーマは「ジャンプ力」について。ジャンプ力を高めたいなら、どんなトレーニングをするのがいいのでしょうか。
これはとても難しい問題です。ジャンプ力がどうしたらつくかという研究は、かなり昔から行なわれています。
たとえば、若い人を集めて3群に分け、それぞれ異なったトレーニングを3ヵ月間続けるという実験がありました。1番目のグループには垂直跳びだけ、2番目はバーベルをかつぐスクワットだけ、3番目はジャンプと同じ姿勢で、地面に対して最大の力を出すというアイソメトリック(第88回参照)のトレーニングだけをさせました。

3カ月後、一番伸びたのはどれだと思いますか?
答えは1番。この結果でいくと、ジャンプ力を高めるなら、ひたすらジャンプをするのがベストということになりますね。
でも、これではつまらない。ということで、次の実験では、1番目のグループはひたすらジャンプだけ、2番目はジャンプとスクワット、3番目はジャンプとアイソメトリックを行なわせました。今度はどうなったか。最も伸びたのは2番でした。
このことから、トレーニング法を一つしか選べないならジャンプだけ。でも、一番いいのは「複合トレーニング」。つまり、基本的な筋力トレーニングをした上で、実際にその筋肉をうまく使って跳ぶ練習を組み合わせればいいというわけです。難しい問題と言いながら、答えはなんだか単純ですね。