筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。筋肉の中でも、スネの前面や前腕の上部などは鍛えにくい部位です。これらの筋肉はどうすれば鍛えられるのでしょうか。
鍛えにくい筋肉をどうしても鍛えたいと言うからには、はっきりとした目的があるのでしょう。だとしたら、その目的によって鍛え方も変わってきます。

まずスネの前面にある前脛骨(ぜんけいこつ)筋は、普通の人がそれほど気にする筋肉ではないかもしれません。しかし、サッカー選手や格闘家となると話は別です。スネのあたりに、かなり負荷がかかっているでしょうし、もっと強化したいと思っている人も多いかもしれませんね。私も昔、サッカーをやっていましたが、長い間ボールを蹴り続けているとスネの筋肉が疲れてきて、足首が返らなくなることもありました。
前脛骨筋のように鍛えにくい筋肉は、負荷をかけにくい筋肉と言い換えることもできます。積極的に鍛えたいなら、何らかの形で負荷をかける工夫をした方がいいでしょう。手近なところでは、ケーブルマシンを利用するやり方があります。ケーブルについているバー(握り)の部分にタオルをかけて輪をつくります。そこにつま先を入れて腰を下ろし、負荷をかけながらトウレイズをします。それを30~40回もやれば十分です。
ヒトの前脛骨筋は、どちらかと言うと、スプリンター型の速筋線維より、マラソンランナー型の遅筋線維が多い筋肉です。だから、高い負荷で強い力を発揮させるよりも、低い負荷で回数を増やすトレーニングの方が向いています。