筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回はトレーニングにおける「押す力」と「引く力」のバランスについて詳しく見ていきましょう。
「押す力」ばかり鍛えていると、「引く力」は衰えるのでしょうか?
積極的に衰えるということはありませんが、押す力ばかり鍛えて、引くトレーニングをまったくしていなければ、両者の差が開いてどんどんバランスが崩れていくことになります。

ただ、基本的なトレーニングでは、押す力を出す時には引く力も同時に出しています。レッグエクステンションを例にとると、大腿四頭筋を主働筋として使いながら、ヒザの関節を安定させるためにヒザを屈曲させるハムストリングスも同時に使っています。
このように、押す力が強くなるにしたがい、関節を安定化させるために引く力もそれなりに強くなっていくと考えられます。押す力を鍛えるトレーニングは、そこそこ引く力のトレーニングにもなっているわけですね。