筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回は、前回紹介した「エキセントリック」なトレーニングの効果を解説します。速筋を鍛えるには最適ですが、デメリットもあります。
前回は、コンセントリックとエキセントリックについて解説しました。コンセントリックは筋肉が力を出しながら短くなること、エキセントリックは筋肉が力を出しながら引き伸ばされることです。バーベルなら、持ち上げるのはコンセントリック、ブレーキをかけながらゆっくり下ろすのはエキセントリックになります。
エキセントリックなトレーニングでは、わかりやすいところで二つの効果が期待できます。まず一つは、トレーニング中に速筋線維を優先的に使っていくこと。速筋線維と遅筋線維を支配している運動神経を比べると、速筋線維の方が細胞体が大きく、支配している筋線維の数も多い。すなわち「サイズが大きい」という特徴がある。ですから、速筋線維の方が太くなりやすいわけです。

トレーニングで徐々に力を出していく場合は、まずサイズの小さな遅筋線維が優先的に使われ、大きな力を出す段階になって、初めてサイズの大きな速筋線維が動員される。これを「サイズの原理」と呼んでいます。ところが、エキセントリックな収縮をしている時には、速筋線維がよく使われることが報告されています。
つまり、エキセントリックなトレーニングでは、サイズの原理を無視して、優先的に速筋線維が動員されるのです。太くなりやすい速筋線維から先に使われるのですから、それだけトレーニング効果も期待できるということになります。