筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回は、筋力トレーニングと実際の競技における動作との関係について見ていきましょう。

筋力トレーニングは、野球などの実際のスポーツ競技における動作に結びつけた方がいいのでしょうか?
むしろ逆です。基本的には、結びつけない方がいいでしょう。というのも、ベンチプレスやスクワットといった基本的なトレーニングは、競技動作とはかなり動きが違います。これらは安全に大胸筋・大腿四頭筋をトレーニングするためにベストな形態なのです。
実際の競技では“スパン”と瞬間的に力を出す必要があるので、第二段階としては、競技における筋肉の使い方、力の発揮のしかたをトレーニングするのがいいでしょう。そうして筋肉の能力を高めた上で、競技動作そのもののトレーニングをする。これは技術練習にほかなりません。野球なら、野球のボールを投げるのが一番いい。この段階で外的な負荷をかけることはやめておくべきです。
キューバの野球チームは、公式のボールより10g程度重いボールを投げる練習をしているそうです。これを日本人がやると肩を壊すと言われています。たった10gですが、これは強い地肩があってこそ成り立つトレーニング。関節や筋肉の働きをギリギリ限度まで使う動作の場合、ちょっとした負荷でもすぐケガに結びついてしまうのです。