筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回のテーマは「握力」について。握力を鍛えるにはどんなトレーニングをすればいいのでしょうか。
じつは、指にはあまり筋肉はありません。握力に関係している筋肉は、指そのものというより前腕の屈筋群です。たとえるなら、指にはケーブルが入っていて、その長いケーブルをつたって、前腕の筋肉が握力を発揮させているのです。ですから、握力をつけるためには前腕の筋肉を鍛える必要があります。
前腕のトレーニングは、リストカールなど手首を屈曲したり伸展したりするトレーニングが基本。でも手首を動かすのと握るのは、タイプの違う運動です。手を握るという動作では、指を曲げる筋肉プラス虫様(ちゅうよう)筋など手のひらにある小さな筋肉も使われ、手全体がコントロールされています。

したがって、握力そのものを強くするには、最終的には「握る」という動作のトレーニングが欠かせません。手首の屈曲・伸展に加えて、ハンドグリップのようなトレーニングをすることですね。
ただ、こうしたトレーニングで飛躍的に握力がアップするかと言うと、じつはそうでもありません。握力は持って生まれた資質に大きく左右されるからです。ベンチプレスなら一般の人の3倍、4倍上げる人もいますが、3倍、4倍も握力のある人は、まずお目にかかれません。それだけトレーナビリティ(トレーニングの可能性)が低いということですね。