筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、無駄な脂肪が落ち、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、残念ながらすべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉やトレーニングの正しい知識をやさしく解説していきます。今回は、前回に引き続き「遺伝」について取り上げます。筋肉も優性遺伝するのでしょうか?
「優性」という言葉からよく誤解されてしまいますが、優性遺伝というのは、何もすぐれた形質が受け継がれるという意味ではありません。筋肉に限らず、基本的には体のすべての特性は遺伝します。
例えば、お父さんは筋肉が発達しやすい遺伝的特質があるけれど、お母さんは発達しにくい特質があるとします。もし、産まれた子供が、筋肉が発達しやすい特質を持っていたとしても、べつにお父さんの特質だけを受け継いだわけではありません。「発達しやすい」という特質が「発達しにくい」という特質より現われやすい(優性)ということ。これが「優性遺伝する」ということです。

この観点から考えると、筋肉が優性遺伝するかどうかは、実はよくわかりません。それほど単純な話ではないからです。
実例でお話しましょう。第18回で書いたスーパーベビーは、突然変異によってミオスタチン(第17回参照)という成長因子がまったくつくられないという特質を持って産まれてきた赤ちゃんです。ミオスタチンがつくられないと、筋肉の成長に歯止めがきかなくなって、筋肉がモリモリになってしまうわけですね。