筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、無駄な脂肪が落ち、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、残念ながらすべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉やトレーニングの正しい知識をやさしく解説していきます。第16回のテーマは 筋肉を形成する先天的な要因について。筋肉や運動能力を決める要因の中で、「先天的な要因」として分かっていることはどのくらいあるのでしょうか。
筋肉や運動の関係で、先天的な要因として決定していることは、現在わかっているだけで三つあります。その中で、最初にわかったのは筋線維組成です。
1976年に、ある生理学者が双子の被験者から筋肉を採取して、速筋線維と遅筋線維の割合を比べました。すると、二卵性双生児はバラバラでしたが、一卵性双生児は組成がまったく同じだった。このことから、筋線維組成は先天的に決定するものだという報告を出しました。

この報告が出て以来、旧東ドイツなどでは早いうちから有能なスポーツ選手の筋線維組成を調べて、遅筋線維の多い子はスプリントには向いていないので持久競技に回すなど、スポーツタレントを養成する手段に使っていたと言われています。