筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、無駄な脂肪が落ち、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、残念ながらすべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉やトレーニングの正しい知識をやさしく解説していきます。今回のテーマは、運動した後に襲ってくる「筋肉痛」について。筋肉痛はどんなメカニズムで発生するのか、ご存じですか?
筋肉痛には、即発性筋痛と遅発性筋痛の2つがある
筋肉痛には2種類あります。一つは「即発性筋痛」と言って運動後すぐに起こるもの。即発性筋痛には筋膜の断裂のような障害の場合と、疲労物質が溜まることなどによって起こるものがありますが、多くは後者です。疲労物質とは、乳酸と一緒につくられる水素イオン(勘違いされがちですが、乳酸そのものではありません)。それによって筋肉が極度に酸性になると、「痛い」「だるい」「重い」という感覚が生じるのです。

もう一つは「遅発性筋痛」。翌日や翌々日に筋肉が痛いというもので、いわゆる一般的な筋肉痛です。運動によって筋細胞の中にミクロの傷ができ、そこで炎症反応が起こる。炎症が起こると、外傷や毒素などで活性化するヒスタミンなどが、たくさんつくられます。その中に痛みや痒みを引き起こす物質があるので、炎症とともに筋肉が腫れ、熱っぽくなったり、力を入れると痛くなったりという状態になるわけです。
とくに筋肉痛が起こりやすい運動は、「ブレーキング動作」。たとえばベンチプレスの場合、バーベルを上げるのではなく、下ろす動作で筋肉は傷つきやすい。山登りなら、登っただけでは筋肉痛は起こりにくいのですが、下りると起こる。スキーの後に筋肉痛になりやすいのも同じ理由です。