筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、無駄な脂肪が落ち、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、残念ながらすべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉やトレーニングの正しい知識をやさしく解説していきます。第13回のテーマは「特定の動作をするときの筋肉の使い方」について。同じ動作をするときは、必ず同じ筋肉を使うのでしょうか。
ボールを投げたり、けったりするような「同じ動作」をするときは、いつも同じ筋肉を使うのでしょうか?
ほぼ100%の確率で、答えはNOです。

自分ではまったく同じ動作をしていると思っていても、使われている筋線維の種類や割合には無限大の組み合わせがある。1回目と2回目で同じ動作ができている確証はどこにもありません。むしろまったく同じである可能性はきわめて低いと考えた方が自然です。
たとえば、ヒジを曲げるというごく簡単な動作は、上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋(わんとうこつきん)、円回内筋という4つの筋肉を主に使います。でも、この4つがどのように仕事を配分しているかは、じつはまだわかっていません。25%ずつなのか、30:30:20:20なのか。主な筋肉の配分すらわからないのに、それぞれの筋線維のどこを使っているかなど到底わからない。
しかも4つ以外にヒジを安定化させるための上腕三頭筋なども使っていますから、組み合わせを考えたらキリがありません。したがって、同じ動作は二度と再現できないのではないかという考え方が成り立ちます。不確定要素がたくさんある中で、たまたま今の動作をしているだけではないかと。