筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回は、筋肉の付き方とスピードの関係を見ていきましょう。「筋肉をつけすぎるとスピードが落ちる」という印象を持っている人は少なくないでしょう。実際はどうなのでしょうか。
格闘技などの競技の世界でいうスピードとは、ある特定の動作が速いか遅いかということですよね。それはいろいろな要因が絡んできますから、必ずしも筋肉が持っているスピードや力だけでは決まりません。ただ、筋肉をつけすぎることでもスピードが遅くなることは、ありえます。

『ポパイ』という漫画がありますね。彼の腕を見ると、上腕はそれほど太くないんですが、前腕がものすごく太い。そういうふうに末端に大きな筋肉がついていると、慣性が大きくなります。慣性というのは「動かしにくく止めにくい」性質。ポパイの腕は、素早く動かすのは難しく、そのかわり一度動かすと止まりにくいということになります。これは格闘技にかぎらず、動作のスピードを出すためには不利に働きます。