筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、無駄な脂肪が落ち、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、残念ながらすべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉やトレーニングの正しい知識をやさしく解説していきます。第12回のテーマは「部位による筋肉の質の違いについて」。速筋と遅筋の割合などの“筋線維の質”は部位によってどう変わってくるのでしょうか。
人間の体にはさまざまな筋肉がありますが、筋肉の質や構造は部位によって違うのでしょうか?
答えはYES。筋肉は役割に応じてさまざまな特性を持っています。

まず、構造から見ていきましょう。ヒザ・ヒジの伸筋など、関節を伸展するための多くの筋肉は「羽状筋」と言って、筋線維が羽のように並んでいる構造をしています。羽状筋は、断面積当たりの筋線維数が多いので、筋力を発揮するために向いている筋肉と言えます。ヒトの体が重力に逆らって姿勢を維持したり運動したりするためには、関節の伸筋が欠かせません。そこで体を支えるための力をおおいに発揮できる構造をしているのです。
これとは逆に、関節の屈筋は重力に逆らう方向に働くわけではありません。素早く大きく動かすことが最優先です。そのため、「平行筋」(紡錘状筋)と言って筋線維が平行して走っているか、羽状筋でも筋線維の傾きが少ない構造をしています。このように、それぞれの筋肉は関節の働きに応じた構造をしているのです。