筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、無駄な脂肪が落ち、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、残念ながらすべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉やトレーニングの正しい知識をやさしく解説していきます。第11回のテーマは「筋肉は1年間でどのくらい増やせるか」。完璧な栄養を摂って、完璧なトレーニングをしたら、どのくらい筋肉を増やせるのでしょうか。
1年でつけられる筋肉は何kgなのでしょうか? 努力すればどこまで増やせるのか、気になる方も少なくないと思います。

いろいろな評価のしかたがあるので、なかなか難しい問題です。
まず、栄養学的な観点から言うと、欧米の大柄な人たちが1日で摂取するタンパク質は、体重の2倍×グラム(g)が理想とされています。70kg の人なら140g となります。これはアスリートが激しい運動をしつつ、1日あたりに消化吸収して自分の身にすることができるタンパク質の量で、日本人の場合は1.5倍×グラム(g)とも言われています。
仮に70kgの人が1日140gを摂取して、そのすべてが新しい筋肉になったとします。すると、10日で1.4kg、1カ月で約4kg、1年間では48kgというのが上限値になります。ただし、これはあくまで理論上の上限値で、摂取したタンパク質のすべてが筋肉になることはありえません。実際は、せいぜいこの二分の一か三分の一ぐらいだと思います。