筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、無駄な脂肪が落ち、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、残念ながらすべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉やトレーニングの正しい知識をやさしく解説していきます。 第9回のテーマは「超回復」について。トレーニングをして筋肉が疲労した後、回復する過程で前のレベルを超えることを一般に超回復と呼びますが、これは実際に起こっている現象なのでしょうか。
超回復というのは、実は正式な理論として使われている言葉ではありません。

トレーニングをすると筋肉は疲労します。その後、筋力が落ちたままでは困るので、だんだん回復していきます。しかし、疲労→回復という過程を繰り返しているだけでは、筋肉が強くなることにはなりません。ここで、「回復した後には前よりも強くなるというフェーズがあるはずだ」という仮説が出てきます。実態はわからないけれども、きっとあるはずだ。ということで、疲労⇒回復によって前のレベルを超えることを超回復と呼んだわけです。
必ず超回復がくるというのは幻想?
しかし、実際に超回復を見た人はあまりいません。特殊な条件でトレーニングをして、そのデータを追っていくと、たしかに超回復が現われることはあります。ただ、普段やっているようなトレーニングで現われるかというと、ほとんどわからないのが実情です。ましてや一回のトレーニングで目に見えて筋肉が強くなることはありえません。
今日のトレーニングで100kg上がった。明日と明後日は回復期で、明々後日になると超回復して105kg上がるなんてことはないんですね。調子が良ければ102.5kgぐらいは上がるかもしれない。でも、3~4日後に必ず超回復がくるというのは幻想に近いと思います。ごくわずかな超回復が起こり、その積み重ねで徐々に強くなっていくと考えた方がいいでしょう。
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