筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回のテーマは筋力と体力の関係について。筋力が増えると体力も増えるのでしょうか。
まず「体力」という言葉の定義が難しいですね。「積極的に行動するための力」、すなわち「行動体力」だとすると、そこにはさまざまな要素が含まれます。筋力やスピード、柔軟性、全身持久力などなど。筋力は、あくまで体力の一要素。筋力があるからと言って、体力があることとイコールにはなりません。さまざまな要素が総合的に高い時に、初めて「体力が高い」と言えるのです。ですから、この質問は簡単に答えられるものではなさそうですね。

ただ、筋力と日々の活動度は比例するかもしれません。200人以上の高齢者を対象に、成長ホルモンを3ヵ月間投与し続け、どのくらい身体機能が上がるかという実験がアメリカで行なわれています。その結果、筋力が80%くらい増したそうです。
この「筋力」というのがどこまでを指すかはわかりませんが、かなり高い効果があったことは確かですね。この場合、成長ホルモンを打ったから直接筋力が増したわけではありません。まず成長ホルモンの投与によって元気になり、今までより活発に動けるようになった。すると、筋肉が刺激を受け、筋力も増していった。両方が加算されることで、初めて効果が出たのだと思います。