筋肉こそ生命活動の原動力。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、残念ながらすべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉やトレーニングの正しい知識をやさしく解説していきます。
第6回のテーマは「筋肉が連動して動く仕組み」について。「立つ」「歩く」「自転車に乗る」といった動作は、一度できるようになると、その後できなくなることはありません。これはどういったメカニズムで実現されているのでしょうか。
筋肉は体重の4割程度
重さで表わすと、30歳ぐらいまでの男性は、体重の40~45%が筋肉。女性は35~40%程度です。
体をうまく動かすためには、端の方に大きな筋肉があるのは設計上よろしくないので、体の中心に近づくほど筋肉が大きくなり、末端に行くほど小さくなります。そして、大きな筋肉が動きの原動力となり、小さな筋肉が末端に力を伝えていきます。筋肉の働きの方向性としては、「内から外へ」というのが原則。その動きを神経が調整しています。

ベンチプレスをやる時に、最初に大胸筋を使って、次に三角筋、上腕三頭筋と頭では考えませんよね。頭の中のどこかに、この筋肉とこの筋肉を順番に使っていくというプログラムがあり、自動的に筋肉が連動していくのだと思われます。
ただ、運動というのは複雑ですから、あらかじめ用意されたプログラムに沿って動くだけでなく、外界からの情報をつねにフィードバックする必要があります。動作の途中で何かが起きた時、すぐ危険を回避したり、代わりのプログラムに切り替えなければいけないこともある。筋肉から戻ってくる感覚信号をフィードバックしながら、中枢神経が動きをコントロールするわけです。
中には中枢神経系とは無関係に、感覚神経系のフィードバックだけで起こる運動もあります。いわゆる反射ですね。こうしたケースも含め、すべてを絶妙に調整しながら、人間は運動しています。