筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回は筋トレと心臓の関係について見ていきます。アスリートは心臓の容量が大きくなるという話を聞いたことがある人もいるでしょう。では、筋トレをやっている人の心臓はどうなのでしょうか。
まず、スポーツ心臓を簡単に説明しましょう。マラソンランナーなど持久競技で活躍する選手は、心臓が1分間に送り出す血液量(心拍出量)が多いほど力を発揮できます。しかし、心臓が1分間に打てる最大数は、アスリートも一般の人も変わりません。そこで、循環する血液量を増やしてやるために、心臓の容積そのものが大きくなっていきます。これが、いわゆるスポーツ心臓です。

一方で、筋力トレーニングをたくさんやっている人や重量挙げの選手も、確かに心臓が大きくなっていきます。ただ、こちらは容積ではなくて、心臓の壁が厚くなるのです。筋肉が大きな力を発揮して胸部内圧が上がると、「より大きな圧力で血液を送り出す」という課題が心臓に与えられ、壁が厚くなっていきます。言ってみれば「心臓も筋トレしている」わけです。