筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回のテーマは「体脂肪」について。体脂肪は低いほうがいいと思っている人もいるでしょう。実際にはどうなのでしょうか。
体脂肪はにっくき敵、自分の体から締め出してしまいたい。そう考えている人がいたら大きな間違いです。体脂肪がなければ人間は生きていけません。
体脂肪の大きな役割の一つは、エネルギーを備蓄することです。栄養素が1gあたりに蓄えることができる熱量は、糖質やタンパク質では4キロカロリー。一方、脂質では9キロカロリーもあります。エネルギーを蓄える上で、脂肪は一番効率のいい物質なのです。また、細胞膜がリン脂質でできているように、脂肪は体の中の細胞をつくる重要な物質の材料としても欠かせません。脂肪がなくなれば細胞もなくなってしまいます。すなわち生きていけなくなってしまうのです。

体脂肪の役割はまだまだあります。男性ホルモン、女性ホルモンのような性ホルモン、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールやアルドステロンなどは脂肪でできています。つまり脂肪がないとホルモンもできないのです。このように、私たちの体に必要だからこそ、体脂肪は存在しているわけです。