筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、無駄な脂肪が落ち、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、残念ながらすべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉やトレーニングの正しい知識をやさしく解説していきます。第4回のテーマは「役目を終えた筋線維はどうなるか」。年を重ねて筋線維の数が減っていく際、筋肉の内部ではどんなことが起こっているのでしょうか。
加齢とともに筋線維の数が減っていくということは、すなわち筋線維が死んでいくこと。ただ、筋線維の発生と同じく、役割を終えた筋線維がどんなふうに死んでいくかは、まだはっきりと解明されていません。

現在の有力な説は、「アポトーシス」という細胞の死に方です。これは「プログラム細胞死」とも呼ばれていて、古くなった筋線維が自ら命を絶つことです。傷んだ細胞をそのまま持っていても、病気の原因になることもあり、体にとってはかえって不利な状態になる。そこで「自分は足手まといだ」と判断した細胞が積極的に“自殺”をすることで、健康な体が維持される。
細胞にはこのような自殺プログラムがあらかじめ備わっていて、加齢とともに神経や筋肉が減っていくと考えられています。「老兵は消え去るのみ」と言ったところでしょうか。
ちなみに、このアポトーシスは遅筋線維より速筋線維の方が激しく起こるようです。加齢にともなって数が減っていくのも、速筋線維の方が圧倒的に先です。