筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、無駄な脂肪が落ち、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、残念ながらすべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉やトレーニングの正しい知識をやさしく解説していきます。第3回のテーマは「筋細胞の一生」について。筋肉の細胞は、どのように生まれ、筋肉を形づくっていくのでしょうか。
ヒトを含めた動物は、受精した卵子が分裂していく過程で、外胚葉、内胚葉、その間を埋める中胚葉の三つに分かれます。筋肉のルーツは、中胚葉の細胞群と言われています。

中胚葉の「側板」というところにいた細胞は、成長していくにつれて、腕や足の方へ移動していき、そこで筋肉になると考えられます。「おまえは腕の筋肉になれ。おまえは足の筋肉になれ」という指令が下され、細胞はそれぞれにしかるべき場所へ移動して、筋細胞になっていくわけです。ただ、どのタイミングで、どんな形で指令が下されるかは、現在のところわかっていません。
おそらく「筋芽細胞」という筋線維のもとになる細胞が移動していって、そこで増殖・融合して長い筋線維になる。しかし、一部の細胞は、そのままとどまって筋線維の表面におとなしくへばりついている。それが「筋サテライト細胞」であろうと言われています。筋サテライト細胞は、将来「幹細胞」となり、傷ついた筋線維が新しく生まれ変わるための“種”のような役割をするというのが定説です。