筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回のテーマは「疲労時の筋肉の回復」について。筋肉を回復させるのに必要なものは何でしょうか。
常識的に言えば、やはり休養と栄養ということになりますが、ここでは、筋肉の中に溜まった疲労物質をいかに早く除去するかというエネルギー的な回復の観点から考えてみましょう。

ひと口にエネルギーを回復すると言っても、陸上競技のレースのように次のレースまでのインターバルが短い場合もあれば、ヘビーなトレーニングの後、数日間で回復させる場合もあります。まず、前者の「短期的な疲労」の場合、回復には軽いエアロビック(有酸素運動)をオススメします。
激しい運動をすると、乳酸などいろいろな物質(代謝物質)が筋肉に溜まり、筋線維のまわりにある溶液の濃度が高くなったりpHが下がったりすることによって、筋肉の働きが維持しづらくなります。乳酸は筋肉の中にある遅筋線維や心臓に取り込まれてエネルギー源として使われますから、軽いエアロビックをして遅筋線維や心臓をよく動かしてやれば、血液中の乳酸濃度がより早く下がっていきます。速く、強く走ったら、すぐにパタッと座ってしまわず、だらだらとジョギングするような運動を続けましょう。