筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回は前回取り上げた「スロートレーニング(スロトレ)」をより詳しく見ていきましょう。
「スロトレ」という俗称でおなじみの張力維持スロー法は、文字どおり、筋が発揮する張力を維持しながら動作を行なうトレーニングです。

第83回でも説明したように、この名前の主役は「スロー」ではありません。ゆっくりやることよりも、まず筋肉の張力を維持することが大事です。動作を素早くさっさとやると、「さ」と「さ」の間で、筋肉が一瞬、ゆるんでしまいます。筋肉をゆるめずに緊張させ続けるには、「さっさ」ではなく「さ――――」と弱く長くやるしかない。だから、結果的にスローになるのです。
続いて、スロトレの仕組みについてお話しましょう。筋肉が力を出すと、筋肉自身の収縮による内圧の上昇によって血管を締めるという特徴があります。血管が締まれば筋肉中の循環が悪くなる。こうして、筋肉が太くなりやすい環境になります。
このメカニズムは加圧トレーニングからヒントを得たものです。加圧の場合は、手っ取り早く外から血管を締めてしまうわけですね。これは効果が高い反面、締め方の加減を間違えたら、とても危険です。もっと安全な方法で行ないたいなら、原点に立ち返ればいい。つまり、筋肉が自分で自分の血管を締める作業を、うまく促してやればいいのです。これがスロトレの原理となっています。
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