筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回のテーマは「自分で動かせる筋肉とそうでない筋肉」について。大腰筋や骨盤底筋など体の奥にある筋肉は「力を入れてみろ」と言われても困ってしまいますが、鍛える方法はあるのでしょうか。
筋肉には、自分の意思で動かせるものと、そうでないものがある、ということは、ご存じの方も多いと思います。
実際、筋肉の分類のしかたでも、自分で動かせるか動かせないかによって、大きく二つに分かれています。
心筋や、内臓の平滑筋などは自分の意思では動かせません。これらは「不随意筋」と呼ばれています。それ以外は「随意筋」。簡単に言うと、自分で止めようと思えば止められるものが随意筋で、止めようと思っても止められないものが不随意筋です。
呼吸をするために必要な横隔膜や、横隔膜と連動している腹筋の一部、あるいは肋骨の間の肋間筋などは、普段自分で動かしている意識はありません。しかし、「呼吸のリズムをつくる」という神経の信号によって、筋肉が周期的な運動(随意運動)をしているので、これらも随意筋に分類されます。
随意筋の中にも、自分で動かしやすい筋肉、動かしづらい筋肉というのがあります。体の表面にあって、自分の目で見て確認できる筋肉は動かしやすい。私たちは、赤ちゃんの頃から「ここの筋肉を動かせば、手足がこう動く」というのを探求していて、長い経験から筋肉の動きを体得しているからです。赤ちゃんが手を握ったり開いたりするのも、筋肉をスムーズに動かすための確認作業なのです。
