筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回のテーマは「パンプアップ」。体を鍛えている人が筋肉を大きく膨らませているシーンは、誰もが見たことがあると思います。これはどういう仕組みで膨らんで見えるのでしょうか。
体を鍛えている人が、人前で裸になる前に腕立て伏せをしたりする。そうすると、筋肉が膨らんで大きく見えます。いわゆる「パンプアップ」。用語としては、かなり広く使われていますよね。

トレーニングをすると、乳酸やアデノシン、ATPの分解産物など、いろいろな物質(代謝産物)が筋肉に溜まってきます。それによって筋線維の周囲の溶液の濃度が高くなると、筋肉の働きを維持するのが大変になる。すると、血液から血漿(けっしょう)の成分が筋肉の方に流れてきて、水分で薄めてやろうという働きが起こる。それで筋肉が水ぶくれしてくるのです。トレーニング後、10分ぐらい筋肉が腫れているような感じがするのは、そういう状態。これがパンプアップの仕組みです。