筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回のテーマは「肉ばなれ」について。スポーツ選手が「肉ばなれ」になったなどという話はよく耳にしますが、具体的にどういう状態なのかご存じですか。
筋肉の中には、結合組織性の膜(筋膜)が複数あります。一本一本の筋線維の外側に「筋肉膜」があり、いくつか束になった筋線維を覆う「筋周膜」がある。そして、筋周膜に包まれた筋線維束がいくつか集まって、「筋外膜」に包まれている。このように何重もの膜で包まれているために、筋肉は力学的に強く、壊れにくい構造になっているわけです。

それでも、限界を超えた強さで引っ張られたり、大きな力が局所的に集中したりすると、その筋膜が切れたり裂けたりすることがあります。しかも、筋膜には血管や神経がたくさん走っているので、出血や痛みが同時に起こります。筋膜に傷がついた状態、これを総称して「肉ばなれ」と言います。筋断裂のようなケガよりは、もう少し軽度ということになります。
肉ばなれが起こりやすいのは、主に下半身。軽い症状の場合はテーピングでグルグル巻きにして運動を続けることもできるかもしれませんが、基本的に肉ばなれが起こったらその部位を使ったトレーニングは不可能です。筋膜から出血して象の足のように腫れることもありますから、その間は安静と休養が必要になります。