筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。今回のテーマは「筋肉の硬さ・やわらかさ」について。筋肉の硬さはどういった要素で決まるのでしょうか。そしてやわらかくする方法はあるのでしょうか。
マラソン選手は筋肉が硬く、短距離選手は筋肉がやわらかい?
筋肉の硬さ・やわらかさには、いろいろな要素が関連しています。ミクロな話からすると、遅筋線維は硬く、速筋線維はやわらかいという特徴があります。マラソンランナーのように遅筋線維をよく使うタイプのスポーツ選手は、筋肉や体が少し硬い。一方、スプリンターは筋肉も体もやわらかいという傾向があるのです。

そもそも遅筋線維はダイナミックに動く筋肉ではなく、重力に逆らって姿勢や動きを維持する働きがメインですから、グニャグニャしているより硬く伸びにくい方が都合がいい。だから、構造的に細胞骨格(細胞の中の骨格)が多く、硬くなるのです。
しかし、スプリンターの中にも筋肉の硬い人がいたり、長距離選手にもやわらかい人がいたりします。これは筋肉の緊張レベルが影響している場合が多い。一般人でも体が硬い人は、だいたい筋肉の緊張のレベルが高く、動きそのものも硬くなりがちです。ストレッチなどで筋肉の緊張を取ってやると、かなり即効的に柔軟性が出てきます。