筋肉こそ生命活動の原動力。筋肉が活動的になれば、代謝が活性化し、健康で元気な体になります。世の中にはいろいろな「筋肉の常識」がありますが、すべて正しいとは限りません。本連載では、筋肉博士・石井直方先生が、筋肉の正しい知識をやさしく解説していきます。人間の筋肉は400もあると言われます。これらを、できるだけ少ない筋トレ種目で鍛えたいならどうすればいいでしょうか。
解剖学的には、人間の筋肉は400、もっと細かく分解すれば600あると言われています。その一つ一つをバラバラに鍛えようとしたら、電極を当てるなどして電気刺激を順番に与えていくしかありません。特定の筋肉に絞って鍛えるのは、はっきり言って無理。そもそも運動というのは、たくさんの筋肉を同時に使うことで成立しているのです。

たとえば、アームカールは上腕二頭筋以外を使っていないように思えるかもしれませんが、ヒジを曲げるには二頭筋のやや外側にある上腕筋や、前腕にある腕橈骨(わんとうこつ)筋も使っています。ベンチプレスも大胸筋や三角筋、上腕三頭筋はもちろんのこと、上半身全体の筋肉や、足を地面につけて行なうので脊柱起立筋や大臀筋あたりも多少は使っているはずです。
このように、ごく基本的なトレーニング種目を30種目ぐらいやっていれば、おそらく400ある筋肉のすべてを、それなりに鍛えることはできると思います。