たんぱく質“たっぷり”の落とし穴、「ほどほど」がいいワケ
第2回 「いいものをいっぱいとればいい」という考えから脱却しよう
村山真由美=フリーエディタ―・ライター
最近、筋肉の大切さが指摘される中で、「たんぱく質をしっかりとるべき」という意識が定着しつつある。だがその一方で、たんぱく質には、誤解されていることが多くある。その一つが、「たんぱく質はいいものだから、とればとるほどいい」という思い込みだとスポーツ栄養やメタボの予防・改善に詳しい神奈川県立保健福祉大学教授の鈴木志保子さんは指摘する。では、なぜよくないのか…。詳しく聞いていこう。
前回紹介したように、たんぱく質は細胞や臓器、筋肉などを構成する重要な栄養素だ。たんぱく質が不足すると筋肉が減少したり、不調や老化の原因になる。
体内にはアミノ酸をリサイクルする仕組みがあるため、たんぱく質の摂取がなくても、“ある程度まで”は筋肉を維持できるが、摂取量が足りないと徐々に筋肉は減っていってしまう。そして行き着くところはロコモティブシンドローム(ロコモ)だ。そうならないためにも、たんぱく質の“必要量”をきちんと摂取することは大切だ(摂取量やロコモについては、第1回を参照)。
そう聞いて、「これからは肉・魚・大豆製品・牛乳などを“たっぷり”とるようにしよう」と思った人もいると思う。しかし、そこに誤解がある。

「不足には気をつけたいですが、とり過ぎはムダになります。目指すべきは『ほどほど』」と言うのは神奈川県立保健福祉大学教授の鈴木志保子さんだ。鈴木さんはスポーツ栄養学の第一人者で、2008年の北京オリンピックで金メダルを獲得したソフトボール女子日本代表チームの栄養指導を担当した。今回は、たんぱく質をとり過ぎるとどうなるのか。また、たんぱく質を効率よくとる方法について、前回に引き続き鈴木さんに聞いていこう。
「いいものをいっぱいとればいい」と考えがちだが…
栄養摂取については一般に、「いいものをいっぱいとればいい」と考えがちだ。野菜は体にいいからたくさん食べたほうがいい、たんぱく質もたくさんとったほうがいいと思っている人は多いだろう。中には、筋肉を衰えさせないためにも、「たんぱく質を多めにとっておかないと不安」に思っている人もいるかもしれない。
しかし、鈴木さんは、「『たんぱく質はとればとるほどいい』と思っている人が多いが、それは誤りです」と話す。
「最近、ステーキがはやっていて、200g、300gの肉を1食で食べる人も珍しくありません。また、定食屋さんなどで鶏の唐揚げ5、6個の定食を食べている人も見かけます。しかし、それではとり過ぎです」(鈴木さん)
活発に運動していない人(体重60~75kgの場合)の、たんぱく質の1食の目安量は16~25gだ(第1回を参照)。だいたい20gくらいと考えればよい。牛リブロース肉(脂身付き)200gにはたんぱく質が40gほど含まれているので、これを食べるだけで目安量の倍のたんぱく質をとってしまうことになる。
また、鶏もも肉の唐揚げは、普通サイズなら1個約30gでたんぱく質は7gほど含まれる。5個35gにごはんとその他のおかずを食べると、これまた完全にオーバー。外食の場合、唐揚げのサイズもごはんの量も多いので、トータルのたんぱく質摂取量は、40g超えも珍しくない(*1)。