筋肉を維持するために本当に大切なものとは…誤解多い“たんぱく質”
第1回 筋肉維持にたんぱく質は必須だが、「ただとればいい」わけではない
村山真由美=フリーエディタ―・ライター
「筋肉をつけるにはたんぱく質が大事」「太りたくないから、糖質を控えてたんぱく質を」――。最近、筋肉の大切さが指摘される中で、「たんぱく質をしっかりとるべき」という意識が定着しつつある。
しかしたんぱく質には、誤解されていること、そして知っているようで知らないことが多くある。いくらとってもいいのか、肉と大豆ではどっちがいいのか、運動する人はプロテインが必要なのか。今回の特集では、スポーツ栄養学やメタボ予防に詳しい神奈川県立保健福祉大学教授の鈴木志保子さんに話を聞いていく。
たんぱく質を「しっかり」って、どのくらい?
健康寿命を延ばし、自分の足でしっかり歩ける体を保ち、将来、寝たきりになるのを防止するには、食生活が大事なことは言うまでもない。中でも、体を作る材料となるたんぱく質の摂取は極めて重要だ。
たんぱく質は英語でプロテイン。これは、古代ギリシャ語のプロテイオス(最も大切なもの)に由来する。たんぱく質は細胞や臓器、筋肉、ホルモン、酵素などを構成する栄養素だ。特に、筋肉量を保ちたい、さらに増やしていこうと思っている人にとっては、まさに最も重要な栄養素といってもいいだろう。

最近では、「たんぱく質をしっかり摂取したほうがいい」という意識は広く定着しつつあるようだ。高たんぱく・低カロリーのイメージが定着している鶏肉の消費は右肩上がりで伸びており、「サラダチキン」はコンビニの大ヒット商品になっている。
日経Goodayではこれまでも、筋肉を減らさないためにたんぱく質を“しっかり”摂取していくことをお勧めしてきた。しかし、この「しっかり」というのが曲者だ。
何を、どれだけ、どんなふうにとればいいのか、また、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質ならどちらを選べばいいのか――。即答できない人も多いのではないだろうか。そして、「誤解」されていることも多い。
例えば、「たんぱく質は多めにとったほうがいい」と思っている人は少なくないだろう。だが、近年の研究では、たんぱく質を一定量以上摂取しても、筋肥大には影響しないという報告もある。必要以上のたんぱく質摂取は意味がないというのだ。

そこで今回の特集では、筋肉を衰えさせないための食事のポイントを、スポーツ栄養学やメタボの予防・改善に詳しい神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部栄養学科教授の鈴木志保子さんに聞いていく。
鈴木さんは、2008年の北京オリンピックで金メダルを獲得した全日本女子ソフトボール代表チームの栄養指導を担当したスポーツ栄養学の第一人者。トップアスリートから、ジュニアアスリートまで、公認スポーツ栄養士として、多数のスポーツ現場で栄養サポートや指導を行っている。2月25日の東京マラソンでは、鈴木さんがサポートしているマツダ陸上部の山本憲二選手が、2020年の東京オリンピックのマラソン代表選考会となるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の出場権を獲得した。