40代から身近になる「緑内障」、片眼5分のレーザー治療の実力は?
第1回 秘かに進行する「正常眼圧緑内障」にも有効
星良孝(ステラ・メディックス)
「パソコン作業でドライアイがひどい」「近視だが、できることなら裸眼で過ごしたい。でも手術は怖い…」「まったく症状がないのに、検診で緑内障の恐れがあると言われてしまった」―。目にまつわるビジネスパーソンの悩みはさまざまだが、どの領域も、近年治療法が急速に進化しているのをご存じだろうか。本特集では、ビジネスパーソンを悩ませる「ドライアイ」「近視」「緑内障」の治療の最前線をリポートする。第1回は「緑内障」のレーザー治療の最新事情に迫る。

最近少し片方の目が見えづらくなった気がする。疲れのためだろうと思っていたが、思いのほか長く続いている気がする…。そうした経験をしたことがないだろうか。
「最初は症状がなくて、目の検診を受けに来て、視力や視野の問題から見つかる人も多くいます。日本人の失明原因の1位である、緑内障のことです」。
こう説明するのは、冨田実アイクリニック銀座(東京都中央区)院長の冨田実氏だ。
厚生労働省の調査によると、緑内障の総患者数は年々増加している。2005年に全国54万人だったのが、2014年には106万人と10年で倍増(*1)。日本緑内障学会が2000年~2001年に行った日本初の本格的な調査(日本緑内障学会「多治見緑内障疫学調査」)によると、40代以上の日本人男性は、20人に1人が緑内障であると分かった(*2、図1)。問題はその9割が緑内障の存在に気づかず、そのため医療機関にかかっていなかったことだ。医療機関にかかるべき状態を放置していれば、失明の恐れも高まる。
*2 日本緑内障学会「多治見緑内障疫学調査」
緑内障は、視神経が何らかのダメージを受けて、視野が失われていく病気だ。目の内部の圧力(眼圧)が高いと、視神経が圧迫されて緑内障を起こしやすくなるが、眼圧が正常範囲であっても緑内障は起こる。かなり進行しないと視力や視野に異変・異常を感じることがないため、発見が遅れることが多い。
緑内障の根本的な原因は不明だが、遺伝的に緑内障になりやすい人がいることや、近視の強い人の方が緑内障を発症するリスクが高いことが分かっている。家族に緑内障の患者がいる人や近視のある人は、特に気をつけたい病気だ。
冨田氏によると、緑内障の自覚症状には以下のようなものがある(*3)。
- 物がぼやけて見える
- 目のかゆみ
- 物が歪んで見える
- 目がかすむ
- 目の痛み
- 目の充血
- 視力の低下
- 視野が欠けて見える
- 距離感がつかみにくい
ただし、これらの症状が出てくるのは、視神経の障害が進行し、視野の欠損や視力が悪化してからのケースが多い。「私たちは日頃から両目で物を見ているため、片方の目に異変があっても、もう片方の目が補ってくれるので、なかなか気がつきません。40代になれば緑内障の恐れは出てきますから、症状がなくても定期的な検診が必要です。少しでも目にトラブルを感じたら、眼科専門医に相談してほしいと思います」と冨田氏。
![]() | 40代以上の日本人の20人に1人が緑内障。症状がなくても定期的な検診を |
そんな緑内障の治療ではここ数年、新しいレーザーによる治療が成果を上げており、注目されている。新しいレーザーは、昔から使われていたレーザーよりも体への負担が軽く、緑内障で問題となる眼圧を下げてくれる。一度ダメージを受けた視神経は残念ながら元には戻らないが、眼圧を下げることで、視野の欠損がそれ以上進行するのを抑えることができるのだ。公的医療保険(健康保険)も適用されるので、もし緑内障と診断されたら、一考の価値のある治療といえる。以下に詳しく紹介していこう。