長く健康でい続けるためには筋肉の維持、つまり「筋トレ」が大事になるが、「まだ普通に動けるから大丈夫」「面倒くさい」などと先送りしている人もいるだろう。しかし、筋トレはできるだけ若いうちに始めることに大きなメリットがあるといわれる。それはなぜなのか。また、どんな筋肉をどう鍛えるのが効果的なのか。高齢になってもしっかりした足腰でいるために今のうちから最低限やっておきたい筋肉エクササイズ、食生活の注意点などを知り、今年こそ「筋トレ習慣」を身に付けよう。
テーマ別特集 始めよう筋トレ 最低限やりたいエクササイズと食生活のポイント
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「筋トレはできるだけ若いうちに始めたほうがいい」といわれるが、それは一体なぜだろうか。
一つには、筋肉は加齢とともにだんだんと衰え、量も減ってしまうからだ。
年を取って筋肉が減ってしまうのは、ある程度は仕方がないこと。だが、何もしないで放っておくと、筋肉量は80歳でピーク時(30歳前後)の半分近くになってしまう場合もある。また、厚生労働省の調査によると、要介護になった主な原因のうち、約4割は筋肉不足に関係しているのだという。

さらに、筋力は病気のリスクに関係していることも分かってきた。筋力が低下した人は、心不全や脳梗塞などでの死亡リスクが高くなり、糖尿病の発症率にも関係している可能性があるのだという。
だからこそ、できるだけ若いうち、50~60代からの「筋肉貯金」が大切だと、近畿大学生物理工学部准教授の谷本道哉さんは主張する。
「しっかりと筋肉を蓄えておけば、年を取って筋肉が多少目減りしても大丈夫。これは老後に備えてお金を蓄えておくのと似ています。70代、80代、90代になっても元気に過ごすために、若いうちから筋肉の備えをしておこうというのが『筋肉を貯金する』という考え方。鹿屋体育大学前学長の福永哲夫先生が“貯筋”という言葉で以前から言われていました」(谷本さん)
筋肉の細胞の数は30~40代から減り始める
若いうちから筋トレを始めたほうがいい理由はまだある。それは、筋肉を形づくる細胞の性質が年齢とともに変わるからだ。
体の組織の細胞は、古い細胞が死ぬとともに新しい細胞が生まれ、入れ替わりを繰り返すのが一般的だ。ところが、筋組織や神経組織はその例外。ある程度は新しい細胞を補充できるものの、基本的には生まれながらの細胞をずっと使い続ける仕組みになっている。
そして、筋肉の細胞数は30~40代から減っていく。そして、特に衰えが進みやすい大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)は、前述した通り、80歳を迎えるころには、30歳前後のピーク時に比べて半分近くにまで減ってしまうのだ。
しかも、80歳を超えるとさらに減少は加速するという。これを食い止めるには、高齢期を迎える前に、できるだけ筋肉細胞の減少を緩やかにすると同時に、残っている筋肉を太く育てる必要がある。つまり、貯金が目減りすることを前提として、筋肉を貯めておかなくてはいけないというわけだ。
筋肉貯金の重要性を理解していただいたところで、次ページからは具体的にどのようなトレーニングを行えばいいのかについて、解説しよう。あれもこれも鍛えようとすると、トレーニングが面倒になり続かないので、「これだけはやりたい」という筋トレを3種類に絞って紹介する。
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