いつまでも健康で、自立した生活を送りたい――。誰もが願う「健康長寿」の実現には、「腎臓」の健康を保つことが欠かせない。生命維持に欠かせないさまざまな機能を担っている腎臓は、よほど悪くならない限り悲鳴を上げない「沈黙の臓器」でもある。本記事では、大切な腎機能が失われる前に、異常値にどう対処すればいいか、腎臓を守るためにはどのような生活習慣に気を付けていけばいいかについて解説する。
背中側の腰より少し上の辺りに左右一つずつある、そら豆のような形をした腎臓は、体の中の老廃物を排出したり、体内の水分量を一定に保ったり、電解質バランスを保ったりと、地味だが生命維持に欠かせないさまざまな機能を担っている。いわば縁の下の力持ちのような臓器だ。

腎臓は、全身の血管の老化の影響を受けやすい臓器でもあるため、腎臓の機能が低下すると、心筋梗塞や脳卒中といった血管の障害を起こしやすくなり、死亡リスクも上昇する。腎機能が半分以下に落ちた人は、腎臓がほぼ正常の人と比べて4倍も死亡率が高いという報告もある。
長い時間をかけて腎機能が落ちていく病気の総称である慢性腎臓病は、推定患者数が1330万人とされ、日本人の1割以上を占めると言われている。
「健康長寿を目指すなら、腎臓の機能が大きく損なわれないうちから、腎臓を大切にしなければなりません。そのためにまず大切なのが、腎機能に異常が生じたとき最初に変化が現れる『尿』の検査を、毎年きちんと受けることです」。腎臓の病気のスペシャリストである横浜市立市民病院腎臓内科長の岩崎滋樹医師は、そう話す。
このテーマ別特集では、大切な腎機能が失われる前に、健康診断で判明する腎臓関連の異常値にどう対処すればいいか、腎臓を守るためにはどのような生活習慣に気を付けていけばいいかについて、過去の好評記事のエッセンスをコンパクトにまとめて解説していく。
たんぱく尿が出たら、98%くらいは腎臓に異常があると考えていい
健康診断の結果を見る際、血圧、血糖、脂質、肝機能などには目がいくものの、腎機能の値となると、自分の値を即答できない人が多いのではないだろうか。そもそもどんな検査項目があるのか知らない人も少なくないだろう。

腎機能をみる代表的な項目には、尿検査の「尿たんぱく」「尿潜血」、血液検査の「クレアチニン」「BUN(尿素窒素)」「eGFR」などがある。まずは尿検査から見ていこう。