中性脂肪が気になる人は「脂身」より「糖質」に注意!
最後に取り上げるのは「中性脂肪(トリグリセリド)」だ。中性脂肪は、コレステロールと並ぶ脂質の1つで、食べ物から直接体に取り込まれるほか、食事でとったエネルギーが余ると肝臓で合成され、体脂肪として蓄えられる。
中性脂肪は、食べ物が足りないときのエネルギーの貯蔵庫、内臓の保持、体温を一定に保つなどさまざまな働きをしている。だが、血中に増えすぎると(高トリグリセリド血症)、血液がドロドロの状態になって血管が老化し、動脈硬化を加速させ、心筋梗塞、脳梗塞といった重篤な疾患を引き起こす原因になる。
この中性脂肪、一般に飲酒によって上がるといわれている。だが、中性脂肪やコレステロール、脂肪肝関連の著書を多く手掛けてきた栗原クリニック 東京・日本橋の院長・栗原毅さんは、こう話す。「確かに、アルコールを“大量に”摂取すると中性脂肪を増やすことにつながると言われていますが、アルコール単体では中性脂肪の数値はなかなか上がらないと私は考えています」。実際、日本酒で1~2合くらいまでの飲酒(アルコール量20~40g未満)であれば、中性脂肪値は上がらないという報告も出ている。
では、お酒を飲む人に中性脂肪が高い人が多いのはなぜだろうか。
「答えは簡単。おつまみを食べ過ぎているんです。最初からポテトサラダを食べちゃうような人は、たいがい中性脂肪が高いですね。お酒を飲まない人でも、食べ過ぎの人は中性脂肪が高くなりがちです」(栗原さん)
おつまみがなぜ中性脂肪を増やすのか。中性脂肪というからには、やはり脂身の多い肉や揚げ物などが問題なのだろうか。
「中性脂肪は、糖質によって増えます。糖質はカラダの中に入るとブドウ糖となり、小腸で吸収され、血液へと送られます。すると血糖値が急上昇し、血糖値を下げるためにインスリンというホルモンが多量に分泌されます。そして、血液中の糖は中性脂肪となり、肝臓や脂肪細胞に蓄積されるのです。中性脂肪を下げるには、血糖値が急上昇しないような食事にする必要があります」(栗原さん)
つまり、前述した食後血糖値を上げないためのおつまみ選びは、中性脂肪を上げないためにも有効なのだ。栗原さんは、血液をサラサラにしたり、中性脂肪を増やさないためにも、積極的に摂取してほしい食材があると話す。具体的には、図6の食品群だ。「頭文字を取って、『オサカナスキヤネ』と覚えておきましょう」(栗原さん)

こうした食品選びに加え、栗原さんは「食べる順番やスピードも大事」だと話す。「食べるスピードはゆっくりと。早食いはドカ食い、肥満のもとです。1回の食事に15分かける『スロー食べ』を意識してください。こうした食べ方を習慣にできれば中性脂肪が上がりにくくなります」(栗原さん)。
中性脂肪が増える元凶は糖質のとりすぎ。糖質の多いおつまみを避け、『オサカナスキヤネ』を積極的にとろう。
いかがだっただろうか。飲み過ぎに気をつけ、おつまみ選びを工夫することで、尿酸値、血糖値、中性脂肪を上げずに宴会シーズンを乗り切ることは可能だ。さらに、休日や隙間時間を利用して、ジョギングなどの有酸素運動、スクワットなどの無酸素運動(筋トレ)をバランスよく行っていこう。
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■葉石 かおり(著)、浅部 伸一(監修) |
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