食後高血糖を抑える飲み方の鉄則は?
次に取り上げるのは、「血糖値」だ。近年の糖質制限ブームなどもあり、血液検査の項目の中でも特に注目度が高まっているものといえば血糖値だろう。血糖値が高い状態が続けば糖尿病と診断され、放っておくと慢性腎臓病や糖尿病網膜症、糖尿病神経障害などの恐ろしい合併症を引き起こす。さらに、動脈硬化を進め、脳卒中、心筋梗塞などの原因にもなる。
最近では、食後に血糖値が急上昇する(=血糖値スパイク)、いわゆる「食後高血糖」の怖さも知られるようになってきた。糖尿病専門医で北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟さんによると、血糖値の異常は、まず食後血糖値に表れるという。「糖尿病の診断基準を満たしていなくても、食後高血糖があるだけで、心筋梗塞などの死亡リスクが高くなることが明らかになっています」(山田さん)。さらに食後高血糖は、老化の原因の1つ「糖化」を進めるとも言われている。
では、血糖値とお酒との関係はどうなっているのだろうか
山田さんによると、かつては「お酒を飲むと血糖値が上がる」「糖尿病患者はアルコールは避けるべき」というのが糖尿病専門医の間でも常識だったという。今は、その正反対、つまり「アルコールは血糖値の上昇を抑える方向に働くという興味深い研究報告が出ています」と山田さんは話す(図4)。

* AUC(血糖上昇曲線下面積、単位はmmol/L・min)は時間経過にともなう血糖値増加量の面積のことで、血糖値上昇を比較するための指標。
「これらの実験結果には説明がつかない部分もいくつかありますが、少なくとも、パンなどの糖質が多い食品とアルコールを一緒に飲むと、食べ物単体で食べるよりも血糖値の上昇が抑制されました。つまり、食事と一緒にお酒を飲むと血糖値の上昇は抑えられる、と言えます」と山田さんは話す。
これは、血糖値が気になる人にとってはうれしい話だろう。では、食後高血糖を抑えるためには、どんな飲み方をするのがいいのだろうか。
「血糖値を上げるのは糖質です。ですから、糖質面から見たお酒選びの鉄則は、『糖質の少ないお酒を選ぶ』ということになります」と山田さんは話す。
「しかし、お酒には個人の好みがはっきりあります。極端に糖質が多いお酒は避ける(もしくは量を控える)にしても、苦手(嫌い)なお酒を選ぶことはありません。ぜひ好きなお酒を楽しんでください。ただし、食事(おつまみ)とお酒の糖質量を合計して、40g以内(1食当たり)に抑えるようにしてください。ここがポイントです」(山田さん)
山田さんが提唱している緩やかな糖質制限「ロカボ」では、1食当たりの糖質量を20~40g以内に抑えることを推奨している(1日当たりでは間食10gも含めて70~130g以内に抑える)。1食トータルで40g以内に抑えるためには、糖質が少ないお酒を選んだほうが有利。その分、おつまみの選択できる幅が広がるというわけだ。
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- 日本酒やビールなどの醸造酒は糖質が多い