老化を防ぎ、健康寿命を延ばすためには、加齢により心身が衰えた状態である「フレイル」の予防が必須になる。フレイルは、健康な状態と要介護状態の中間に当たるが、これを避けるために特に重要なのが「筋肉量の維持」だ。筋肉量が減少すると、足腰が弱くなって寝たきりにつながるだけでなく、認知症や心疾患のリスクが上がることも分かってきた。筋肉量を維持し、フレイルを防ぐために何をすればよいだろうか。
テーマ別特集 働き盛り世代も注意!「フレイル」の予防法
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老化を防ぎ、健康長寿を実現することは誰もが共通に願うことだろう。
日本人の寿命は延び続けているが、大事なのは「長さ」だけでなくその「中身」。寝たきりの期間を短くして、介護されることなく自分の足で歩ける期間(=健康長寿)をできるだけ長くキープする、これが理想だ。そのためには何をすればいいのだろうか。
人の体は、歳とともにさまざまな器官が衰える。「老化を防ぐ」と一口に言っても、その対象は脳はもちろん、内臓、皮膚、骨、目、耳、髪など多岐にわたるが、寝たきりを避けるのを目標に据えるなら、自分で立ち、歩く力を支えるために重要となる「筋肉量の維持」が大きなポイントになる。
筋肉量が減り、筋力が衰えると、加齢により心身が衰えた状態である「フレイル(虚弱)」になる恐れがある。フレイルとは、英語のFrailty(フレイルティ)の日本語訳として日本老年医学会が提唱した用語だ。
この記事では、フレイルにならず、健康寿命を延ばすためにどうすればいいのかについて、過去の日経Goodayの人気記事からコンパクトにまとめてお届けする。
筋肉量の減少が、寝たきりや認知症に結びつく
筋肉量は、普通に生活を送っていても、加齢とともに徐々に減っていく。筋肉量のピークは20代で、30代以降は年間1%ずつ右肩下がりで減り続けることは知られている(詳しくはこちらの記事を参照)。そして、筋肉量の低下は大腿四頭筋など下半身の大きな筋肉を中心に進むことも分かっている。
加齢に伴う筋肉の減少には、運動神経数の減少、成長ホルモンや性ホルモンの分泌の低下、活動量の低下など、さまざまな要因が関わるとされる。そして、高齢になるほど、食事からとったたんぱく質を筋肉に合成する力が弱まることも分かってきた。
右肩下がりの筋肉量の減少を放置するのは危険だ。高齢になったときに歩行や階段の上り下りがおぼつかなくなり、フレイル(虚弱)をはじめとした老化に伴うさまざまな問題が起こりやすくなる。寝たきりにつながるリスクを高めるほか、近年の研究から認知症リスクを高めることも明らかになっている。
フレイルとは、元気な状態と要介護の中間のこと、つまり要介護予備軍だ。

「フレイルは筋肉量および筋肉の働きの低下で起こることが多いとされています。20代の筋肉量を100%とすると、70代の太ももの筋肉量は60%まで低下することが分かっています。そして、フレイルは低栄養や運動不足によって悪化します。栄養面では、特にたんぱく質の摂取不足が問題になります」と東京都健康長寿医療センター副院長・内科総括部長の荒木厚さんは話す。