最近、筋肉の大切さが指摘される中で、「たんぱく質をしっかりとるべき」という意識が定着しつつある。だが、たんぱく質は、誤解されていること、そして知っているようで知らないことが多くある。いくらとってもいいのか、肉と大豆ではどっちがいいのかなど、即答できない人も多いだろう。本特集では、たんぱく質の基礎から、正しい摂取法、そして身近な食品に含まれるたんぱく質の量までを一挙に紹介する。

健康を維持し、将来、寝たきりになるのを防止するには、食生活が大事なことは言うまでもない。中でも、体を作る材料となるたんぱく質の摂取は極めて重要だ。特に、筋肉量を保ち、さらに増やしていこうと思っている人にとっては、最も重要な栄養素といってもいいだろう。
最近では、「たんぱく質をしっかり摂取したほうがいい」という意識は広く定着しつつある。日経Goodayではこれまでも、筋肉を減らさないためにたんぱく質を“しっかり”摂取していくことをお勧めしてきた。しかし、この「しっかり」というのが曲者だ。
何を、どれだけ、どんなふうにとればいいのか、また、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質ならどちらを選べばいいのか――。即答できない人も多いのではないだろうか。そして、誤解されていることも多い。
そこで今回の「テーマ別特集」では、筋肉を衰えさせないためのたんぱく質の摂取のポイントを、関連記事からピックアップして紹介していこう。
(※関連記事の一覧は最終ページに紹介しているので、より詳しく知りたい人はそちらもご覧ください)。
たんぱく質が不足すると筋肉は減っていく
スポーツ栄養学やメタボの予防・改善に詳しい神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部栄養学科教授の鈴木志保子さんは、「たんぱく質は筋肉の材料になるのはもちろん、骨を健全に保つためにも必要な栄養素です。適切にとっていただくことはとても大切ですが、誤解されていることが多い」と話す。
「例えば、最近の糖質制限ブームもあり、主食をきちんと摂取せず、必要以上にたんぱく質を摂取している人が増えています。ですが、たんぱく質は必要以上とっても意味はありません。一方で、糖質の摂取を極端に減らしてしまうと、筋肉を減らすことにつながる可能性があります」(鈴木さん)
これはどういうことなのだろうか――。これを理解するためにも、食事でとったたんぱく質が体内でどのように働くのかを知っておこう。
最初に、たんぱく質とアミノ酸の関係を理解しておきたい。たんぱく質は、多数のアミノ酸が結合して(ペプチド結合)、構成されている物質だ。アミノ酸が2個以上結合したものをペプチドといい、たんぱく質はアミノ酸が80個かそれ以上複雑に結合してできている。

私たちが肉、魚、卵、大豆などを食べると、これらのたんぱく質は胃・小腸でアミノ酸に分解される。そして、小腸から吸収され、血液に乗って全身の細胞に運ばれる。そこで、DNA(遺伝子)に従って必要なたんぱく質に合成される。
私たちの体は約10万種類ものたんぱく質で構成されているが、これらは、たった20種類のアミノ酸の組み合わせのバリエーションからなる。20種類のうちの9種類は体内で合成できないか、合成されても少量のため食事からとる必要がある。それが必須アミノ酸だ。