「名前が出てこない」「自分が何をしようとしたのか忘れる」…。年齢とともに増えてくる“もの忘れ”は、ミドル以上なら誰にでも経験があるもの。とはいえ、⾃分は周りと比べてひどいのでは? と不安に思うことも多い。中には「ひょっとして認知症が始まったのか」と深刻に悩んでいる人もいるかもしれない。本特集では、もの忘れの原因は何なのか、将来の認知症につながるのか、もの忘れを改善したり認知症を予防するにはどうすればいいのかについて、一挙に紹介する。
テーマ別特集「もの忘れと認知症」
Index 1
「もの忘れ」は怖くない!? 認知症リスクの高い50代の特徴とは?
Index 2
もの忘れを改善するにはまず「睡眠」から! 脳をきちんと休めよう
Index 3
Index 4
(※関連記事の一覧は最終ページに紹介しているので、より詳しく知りたい人はそちらもご覧ください)。
知っておきたい、もの忘れと認知症の違い

年を取ると「もの忘れ」が多くなる。固有名詞が出てこなくなり、つい「あれ」や「それ」といった指示代名詞を多用してしまう。誰もが知っているベテラン俳優の名前が出てこないときなど、ふと「自分の脳は大丈夫か? まさか認知症が始まったのでは…」と不安になることもあるだろう。
それに対して北品川クリニック・予防医学センター(東京都品川区)所長の築山節さんは、「心配は無用です。もの忘れと認知症は違うし、もの忘れしない人はいません。筋肉と一緒で、年を取れば記憶力や暗算など“脳の基礎体力”が落ちるのはやむを得ないでしょう」とほほ笑む。
もの忘れは子どもや若者だってするが、やはり年を取ると増えることは否めない。それは脳の老化による機能低下の一つだ。単なるもの忘れなら心配はいらない。では、もの忘れと認知症による記憶障害はどこが違うのだろうか?
一言で言えば、もの忘れは「部分」を、認知症は「全体」を忘れる。もの忘れは、一度覚えた記憶を取り出せなくなる状態。それに対し、記憶自体がスッポリなくなるのが認知症だ。
例えば、「読んだ小説の主人公の名前を忘れる」のがもの忘れで、「その小説を読んだことそのものを忘れる」のが認知症。「今年行った温泉の名前を忘れる」のがもの忘れで、「今年温泉に行ったことそのものを忘れる」のが認知症。「見たかったテレビ番組を録画し忘れる」のがもの忘れで、「録画の方法を忘れる」のが認知症、といった具合だ。