いつまでも強い足腰を保つためには、下半身の筋肉だけでなく「強い骨」を維持することが欠かせない。筋肉と同じく、年を取ると骨の量も減っていくが、生活習慣に注意すれば骨を強くすることは可能だ。本記事では、骨を弱くする要因や、今日から実践したい骨の強化策をまとめていく。
テーマ別特集 強い足腰を維持するための「骨」の強化法
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人生後半戦を、好きなことを楽しみながら元気に過ごすには、タフな足腰が欠かせない。いつまでも自分の足でスタスタと歩くために、日ごろから下半身の筋肉を維持・強化することが大切だが、筋肉量の維持と同時に忘れてはいけないのが、骨を強く保つことだ。
骨がもろくなってしまうと、年をとったときに転倒や尻もちなどのちょっとした衝撃で簡単に折れてしまい、それをきっかけに寝たきりや要介護状態になってしまうことが少なくない。
下のグラフは、2016年の国民生活基礎調査で、「要支援・要介護になった原因」を調べたものだ。「骨折・転倒」は第4位で12.1%。続く第5位の「関節疾患」(10.2%)と合わせると22.3%になり、1位の認知症(18.0%)や2位の脳血管疾患(16.6%)よりも高くなっている。骨や関節のトラブルから介護が必要になる人は想像以上に多いことが分かる。

健康長寿の大敵となる「骨の脆弱(ぜいじゃく)化」を予防するには、筋トレと同じように、若いうちから「骨を強くする生活習慣」を取り入れていくことが大切だ。このテーマ別特集では、骨が弱くなるメカニズムや危険因子、骨を強く保つための生活習慣のポイントなどについて、過去の好評記事のエッセンスをコンパクトにまとめて解説していく。
「運動不足」「低体重」「カルシウム不足」は骨の大敵!
年を取ると筋肉が減っていくように、若いころには骨の中にみっしりと詰まっていた成分(カルシウムやたんぱく質)も徐々に減り、骨の量や、骨の密度(骨密度)が落ちてしまう。その結果、自分では気が付かないうちに骨がもろくなり、ちょっとした衝撃で、ある日いきなり骨折してしまうのだ。背骨などは、自分が骨折していることに気が付かない、「いつの間にか骨折」を起こすことも多い。
「骨の強度が下がり、骨折のリスクが高まった状態が、骨粗しょう症です。X線を用いた測定機器で骨密度を測定し、20代30代といった若年成人の平均値の70%以下まで下がっていると、骨粗しょう症と診断されます」。伊奈病院整形外科部長で、NPO法人高齢者運動器疾患研究所代表理事も務める石橋英明さんは、そう話す。診断を受けていない潜在的な患者も含めると、骨粗しょう症患者は国内に約1280万人(*1)いると推定されている。
では、具体的に、骨はどのように弱くなっていくのだろうか。
私たちの骨は常に新陳代謝を繰り返し、生まれ変わっている。骨の中にある破骨(はこつ)細胞という細胞が古い骨を溶かし(骨吸収)、骨芽(こつが)細胞と呼ばれる細胞が新しい骨を作る(骨形成)。このプロセスを骨代謝という。骨の量は、成長とともに増加し、20歳ごろにピークに達する。その後、しばらくは維持されるが、女性は40代後半、男性は60歳ごろから徐々に下がっていく。
女性の方が骨量の低下が早い原因は、閉経だ。女性ホルモン(エストロゲン)には古い骨を壊す破骨細胞の働きを抑える作用がある。ところが閉経すると女性ホルモンが減るため、破骨細胞の働きが活発になって骨吸収が進み、骨形成が追い付かなくなってしまう。その結果、急速に骨量が減って骨密度も下がっていくのだ。