今、世界的に「全粒穀物」の健康効果が注目されている。全粒穀物の摂取が増えるほど、がん、心血管疾患、総死亡率が低くなるという研究報告も出ている。
その健康効果の中核となっているのが「食物繊維」だ。食物繊維が体にいいことはよく知られているが、主に便通などに影響するものと軽視されがち。だが、食物繊維不足は生活習慣病と密接な関係がある。本特集では、主食の選択が及ぼす健康効果から、注目の大麦の健康効果、穀物以外の食物繊維のとり方までを一挙に紹介する。
テーマ別特集「主食の選択」
Index 1
全粒穀物で死亡リスクが下がる!「主食の選択」が健康寿命を左右する
Index 2
内臓脂肪が減る、血糖値上昇も抑える…大麦が注目される4つの理由
Index 3
朝食に「3割麦ごはん」から! 納得できる大麦の選び方、賢い食べ方
Index 4

健康のため、そして肥満防止・ダイエットのために、「なるべく減らしたほうがいい!」と最近よくいわれるのが糖質だ。糖質を過剰にとると、肥満につながるのは周知の通り。そして糖質の過剰摂取は、動脈硬化などのメタボ疾患の原因になることもよく知られている。
では、糖質の摂取を抑えるにはどうすればいいか。多くの人が真っ先に思いつくのが、ごはんやパンなどの“主食”を控えることだろう。しかし、主食は私たちの健康を左右する大切な食べ物。主食を「何でとるか」が、血糖値はもちろん、メタボリックシンドローム、さらには寿命にまで影響することが、最新の研究によってわかってきた。
中でも今注目されているのが「全粒穀物」だ。近年の研究結果を受けて、米国の食生活指針では「穀物の半分以上を、精製していない全粒穀物にしましょう」と推奨している。
そこで今回の「テーマ別特集」では、主食をどう選ぶべきか、最近注目の大麦の健康効果と大麦商品の選び方、そして穀物以外の食物繊維のとり方について、関連記事からピックアップして紹介していこう。
(※関連記事の一覧は最終ページに紹介しているので、より詳しく知りたい人はそちらもご覧ください)。
糖質は減らしたほうがいいというが、単純に主食を減らすと…
糖質制限ブームの中、“減らしたほうがいい”と思いがちなのが「主食」だ。しかし、食生活と腸内環境、生活習慣病の関係に詳しい、大妻女子大学家政学部教授の青江誠一郎さんは、糖質を減らしたいからといって、単純に主食を減らすことには弊害があると指摘する。
「最近は糖質制限ブームで、安易にごはんなどの主食を食べる量を減らしている方が増えています。しかし、『単純にごはんを食べる量を減らす』というやり方だけでは、失うものが多くあることも正しく認識すべきです。メタボリックシンドロームの発症をかえって高めてしまう危険性があるだけでなく、主食の選択が死亡率にも影響を及ぼすことが近年の研究で明らかになってきています」と、青江さんは注意を促す。
ごはんを食べる量を減らすと、何が良くないのか。「ごはんは、日本人にとって非常に重要な食物繊維の摂取源なのです」と、青江さんは説明する。
食物繊維は小腸で消化吸収されないかわりに、大腸に到達してそこにすむ腸内細菌のエサになり、健康維持に役立つ様々な働きを担っている。また、食物繊維が不足し、さらに高脂肪食が続くと、全身の炎症を進めることも近年の研究により分かっている。
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