これまで多くの人の命を奪い、「死の病」であった胃がんが、「ピロリ菌」除菌の登場によって未然に防ぐことができる病気になってきた。また、万が一胃がんになってしまった場合も、胃カメラによる検診を定期的に受けていれば、超早期の段階で見つけて治療し、胃の機能をほとんど損ねることなく日常生活に戻ることができる。本特集では、近年死亡率が大きく減少している胃がんの最新事情をまとめる。
テーマ別特集「胃がん」
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日本をはじめ、アジア諸国に多い「胃がん」。がんの部位別罹患数では、胃がんが長らくトップの座を維持し、現在でも罹患率は大腸がん、肺がんと並んでトップグループにある。胃がんは最も身近ながんで、恐ろしい病気というイメージを持つ人も多いだろう。
だが、胃がんをとりまく状況は、近年、劇的に変化してきている。今回の「テーマ別特集」では、胃がんの主たる原因であることが明らかになった「ピロリ菌」の正体、除菌治療の効果、さらに、胃がんを超早期で見つけ出す最新鋭の内視鏡検査の驚くべき実力について、関連記事からピックアップしてコンパクトにご紹介する。
(※関連記事の一覧は最終ページに紹介しているので、より詳しく知りたい人はそちらもご覧ください)。
「死の病」であった胃がんは、今や予防可能な「感染症」に
かつて、胃がんは日本人にとって「死の病」だった。国立がん研究センターがん対策情報センターがまとめた、2017年のがん罹患数予測では、胃がん(13万2800人)は大腸がん(14万9500人)に次いで2番目の多さとなっている(3位は肺がんで12万8700人)。男女別にみると、胃がんは男性では1位、女性では乳がん、大腸がんに次いで3位だ。
胃がんの死亡数も1970年代からずっと5万人前後で推移し、1990年代に肺がんに抜かれるまで、群を抜いていた。ところが、ここ数年で状況が変わってきている。2000年を過ぎたころから胃がんの死亡数は減少に転じ、2013年を過ぎるとさらに減少のペースが早まり、2016年の死亡者は4万5000人台半ばまでになった。
なぜ、死の病だった胃がんの死亡者数が減っているのか。そのカギを握るのが、ピロリ菌だ。
このピロリ菌の存在が医学界で大きく取り上げられるようになったのは、わずか30数年前のこと。その後の研究により、ピロリ菌こそ、胃がんの主たる原因であることがわかってきた。ピロリ菌を除菌すれば胃がんの罹患率は下がる。2013年には、保険診療でピロリ菌の除菌治療を受けられる対象が拡大されたことで、実際に除菌した人も増えた。その結果、胃がんの早期発見や治療技術の進歩とあいまって、死亡者数の減少という形でデータに現れるようになったのだ。
いったい、ピロリ菌とはどんな菌なのだろうか。
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