尿酸値と関係する病気といえば「痛風」を思い浮かべる人が多いだろう。だが、近年の研究から、尿酸値の高い状態が続くことは、痛風だけでなく、様々な疾患の原因となることが明らかになってきた。尿酸値が高くても何の自覚症状もないため放置している人が多いが、放置は厳禁だ。本記事では、最新研究から見えてきた「高尿酸血症を放置するリスク」と、すぐに実践したい尿酸対策をまとめる。
テーマ別特集 痛風だけじゃない!「高すぎる尿酸値」のリスク
Index 1
Index 2
Index 3
Index 4

多くの人がご存じのように、血中の尿酸値が高いと、「風が吹いても痛い」ともいわれる「痛風」(痛風関節炎)を起こすリスクが高まる。だから尿酸値は下げるべき、というのは間違いない事実だ。
だが、尿酸値が高い状態を放置しておいてはいけない理由はそれだけではない。
というのも、尿酸値が高い状態は様々な病気のリスクを高めることが、近年の研究で次々と明らかになっているためだ。高血圧、糖尿病、腎障害、さらには心疾患のリスクを上げる要因であることが分かってきた。そして、ここ10年ほどの間に、それを裏付ける報告が続々と出ている。
尿酸・痛風のエキスパートで、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』の改訂委員長を務めた鳥取大学大学院 医学系研究科再生医療学分野教授の久留一郎さんは、「高尿酸血症による“全身の”疾病発症のリスク」について警鐘を鳴らす。
「高尿酸血症は一般に、痛風リスクの観点から局所的な関節の病気のリスクとして取り上げられることが多いですが、高尿酸血症は『全身病』です。現在、高血圧、糖尿病などの生活習慣病、それに腎障害、心血管障害などとの関連性を指摘する報告が次々となされています。過剰な尿酸を各臓器の細胞が取り込んで、臓器障害が起こるメカニズムも明らかになってきています」(久留さん)
今回のテーマ別特集は、最新研究で明らかになってきた高尿酸血症のリスクの実態と、尿酸値が高い人が実践すべき対策を紹介していく。
尿酸値が7.0mg/dLを超えると痛風リスクが着実に高まる
まずは、広く知られている「痛風」への影響から見ていこう。
尿酸値が7.0mg/dLを超えると、尿酸が結晶化して関節に沈着するようになる。「尿酸の生理的溶解度は6.4mg/dLですが、尿酸結合性たんぱくが存在するため、7.0mg/dLまでは過飽和状態にならずに血液中に存在可能です。しかし、7.0mg/dLを超えると、血液中に溶けきれなくなり、結晶化して関節に沈着するようになります」(久留さん)

この結晶が何かのはずみではがれると炎症が起きて、強烈な痛みを感じる。これが「痛風発作」と呼ばれるもので、その激痛は想像以上だ。
なお、尿酸値が7.0mg/dLでも痛風発作が起きていない人の中には、「関節に結晶が付着していないのでは…」と思っている人がいるかもしれないが、これは誤解だ。