肝臓とともに「沈黙の臓器」と呼ばれる膵臓。激痛に襲われる「急性膵炎」や、発見しにくく5年生存率が極めて低い「膵がん」など、膵臓の病気には厄介なものが多い。今回は、膵臓という臓器の役割や、膵臓の代表的な病気である「膵炎」「膵がん」の怖さ、早期発見のコツをまとめていく。
テーマ別特集「かかると怖い!『膵炎』『膵がん』」
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肝臓とともに「沈黙の臓器」と呼ばれる膵臓。日ごろその存在を意識する機会は少ないが、ひとたび急性の炎症が起きると痛みは猛烈で、重症になれば死に至ることもある。また、膵がんは数あるがんの中でも「治らないがん」「恐ろしいがん」の代名詞となっている。こうした膵臓の病気を避けるには、どうすればいいのだろうか。
この記事では、日経Goodayの過去の人気記事の中から、「膵炎」と「膵がん」の成り立ちや恐ろしさ、予防のコツなどを、コンパクトにまとめてお届けする。
急性膵炎は“お腹のやけど”のような強烈な炎症を起こす
みぞおちが痛くなったとき、私たちの多くは胃の病気を疑って、「ストレスかもしれない」「食べ過ぎ・飲みすぎだろう」「何か悪いものを食べたかな」などと考える。よほどの激痛ならすぐに受診するとしても、少々の痛みなら胃薬などでやり過ごしてしまうのではないだろうか。しかし、その間に水面下で進行する病気がある――それが、膵臓の病気だ。
膵臓は、胃の後ろ側にある10~15cmの小さな臓器で、「食べ物の消化に不可欠な消化酵素を出す」「インスリンなどのホルモンを分泌する」という、生命を維持する上で欠かせない機能を担っている。だが、膵臓は胃の後ろ側に隠れているため、異変が起きても気づかれにくい(図1)。

膵臓の中には膵管というパイプがあり、そこを消化酵素を含む膵液が流れている。この膵管が何らかの原因で閉塞すると、膵液は逆流して膵臓へと向かい、膵液に含まれる酵素が膵臓や膵臓の周囲の組織を溶かし始める。「行き場がなくなった膵液は膵臓の外にもあふれ、血液中にも入り込みます。こうして起こるのが急性膵炎です」。膵臓の病気のエキスパートである、東京医科大学消化器内科学分野主任教授の糸井隆夫さんはそう話す。
急性膵炎の痛みは激烈で、尿路結石や心筋梗塞と並ぶ3大激痛の1つに数えられる。みぞおちの激痛で七転八倒するのが最大の特徴で、背中の痛み(背部痛)も伴うことが多い。その痛みから、“お腹のやけど”の異名を取るほどで、急性膵炎を経験すると、「以前は好きだったお酒を、見るのも嫌になった」と話す人も多いという。
急性膵炎の最も多い原因は、男性はアルコール、女性は胆石
膵臓が炎症を起こす原因は性別によって異なる。男性はアルコール、女性は胆石が最も多い(図2)。「ベースにあるのは、食生活の欧米化です。脂っこいものを食べながらアルコールを過剰に摂取すると、それに対処するために膵液がたくさん分泌され、膵臓への負担が増すのです」と糸井さんは話す。
女性に多い胆石は、胆汁に含まれる、コレステロール、レシチン、胆汁などのバランスが偏った結果、胆嚢(たんのう)内にできる結石だ。その大半は脂っこいものの摂取から起こるコレステロール結石で、その石が胆管を経て膵管との合流部に届くと、膵液の流れが悪くなって閉塞してしまうのだ。
