日本人のがんの中で、いまや罹患率1位となっている「大腸がん」。年間5万人以上が亡くなり、死亡率も肺がんに次いで高い。だがこのがんは、早期発見すれば治りやすいという特徴も持つ。本記事では、大腸がんの特徴や、早期発見のための検査の受け方、かかるリスクを下げる日常生活の心得などをまとめていく。
テーマ別特集 早期発見、早期治療で治す「大腸がん」 適切な検査の受け方は?
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身近な人から「がんになった」と聞かされるとき、かつて圧倒的に多いのは胃がんだった。だが近年、胃がんに代わって増えているのは「大腸がん」だ。新たに大腸がんと診断される人の割合、「罹患率」(人口10万人当たり)を見ると、大腸がんは男女合わせて1位に躍り出ている(男性3位、女性2位 図1)。

大腸がんで亡くなる人も増加している。その数は年間5万人を超え、大腸がんの死亡率(人口10万人当たり)は男女合わせて2位に上がってきた(男性3位、女性1位)。約30年前まで、死亡率のトップを独走してきた胃がんが大きく減少したのとは対照的だ。
大腸がんで亡くなる人も、かかる人も多いと聞くと、「大腸がんは、かかったら死を免れない怖いがんなのだ」と思う人もいるかもしれない。だが実は、大腸がんは、膵臓がんや肺がんなどに比べれば比較的“おとなしい”がんでもある。早期発見さえできれば、9割が治るとされる。
このテーマ別特集では、大腸がんの早期発見のコツや、受けるべき検査、そして大腸がんのリスクを下げるための生活上の注意点などについて、過去の好評記事のエッセンスをコンパクトにまとめて解説していく。
大腸がんの5年生存率は、早期発見なら95%
がん・感染症センター都立駒込病院外科部長の高橋慶一さんは、「大腸がんは、他のがんと比べるとおとなしいがんだといえます」と話す。
罹患率も死亡率もかなり高いがんなのに、おとなしいとは一体どういうことなのか。まず、がんと診断された人が5年後に生存している割合、「5年生存率」を見てみよう(図2)。全てのがんの5年生存率の平均は66.4%だが、大腸がんに限ると72.6%と、平均を上回っている。5年生存率が10%を切るほど低い膵臓がんなどと比べれば、ただちに命を脅かすがんではないわけだ。

「大腸がんの罹患率・死亡率が増えているのは事実です。しかし、他のがんに比べると、大腸がんは治療効果が非常に高いという特徴があります。手術で治しきれる可能性が高く、万一進行しても、抗がん剤による化学療法が比較的よく効くがんなのです」(高橋さん)
大腸がんにかかる人の数自体が増えているため、人口10万人当たりの死亡率もある程度は高くならざるを得ない。だが、大腸がんよりも罹患率が低い肺がんに比べて死亡率が低く抑えられているのは、治療効果が高いことが一因だと推察される。
大腸がんを初期(ステージI)で見つけた場合の5年生存率は、95.1%。大腸がんは根治術の5年後に再発しなければ治ったと考えるのが一般的で、早期に発見・治療すれば9割以上は治ると言える。だが、発見時点で進行していれば5年生存率は徐々に低下し、一番進んだステージIVでは、20%を切ってしまう。
「大腸がんは治療効果が高い」という恩恵にあずかるためには、いかに早くこの病気の存在に気づくかが大切になってくる。他のがんと同様に、大腸がんも早期のうちから症状が出ることはほとんどない。では、どの検査をいつ受ければ、適切に対処することができるのだろうか。