中高年にさしかかった男性にとって、病気が心配になる臓器の1つが「前立腺」だ。前立腺の病気のツートップ、前立腺肥大症と前立腺がんは、いずれも中高年になると急増する。前立腺肥大症は夜間頻尿などの尿トラブルの原因になり、前立腺がんは、進行が遅くおとなしいがんと思われているが、骨に転移しやすいという特徴があり、怖い一面もある。今回のテーマ別特集では、前立腺の病気の症状から、具体的な治療法までを紹介していこう。
テーマ別特集「男を悩ませる前立腺の病気」
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中高年になると、「夜中に何度もトイレに起きるようになって…」などと排尿に関する悩みを持つ人は多い。
これが60代以降の男性になると、「前立腺肥大症で頻尿になった」とか、「前立腺がんの検査を受けた」という人が急に増えてくる。中高年男性にとって、前立腺は一大関心事なのだ。
だが、「そもそも前立腺って何?」と聞かれて、あなたは即答できるだろうか。前立腺は女性には存在しない、男性固有の臓器。にもかかわらず、男性であっても、前立腺が何のためにあるか答えられない人が多いのが現状だろう。
前立腺肥大症と前立腺がんは、いずれも中高年になると急増する。前立腺肥大症は夜間頻尿などの尿トラブルの原因になり、前立腺がんは、進行が遅くおとなしいがんと思われているが、骨に転移しやすいという特徴があり、怖い一面もある。
今回のテーマ別特集では、前立腺の病気の症状から、具体的な治療法までを紹介していこう。
加齢とともに前立腺の病気は急激に増加する
改めて、前立腺とはどのような臓器だろうか。手術支援ロボットを用いた前立腺全摘手術に精通する泌尿器科のエキスパートである東京国際大堀病院院長の大堀理さんは、次のように語る。
「前立腺は、膀胱の下にくっつくように位置するクルミ大の小さな臓器で、成人でも約20gしかありません。前立腺が肥大すると、トイレに行く回数が増えたり、排尿後にスッキリしない感じが続いたりと、日常生活に支障が出始めます。また、前立腺がんは進行がゆっくりでおとなしいがんと思われていますが、骨に転移しやすいという怖い一面もあるのです」(大堀さん)

大堀さんは、これまで850件を超えるロボット手術を担当し、第一線で前立腺の病気に向き合ってきた医師だ。大堀さんによると、前立腺の病気は長寿ゆえに増える病気であり、完全に予防するのは困難であるという。
「平均寿命が短かった江戸時代のころは、前立腺の病気で悩む男性はほとんどいなかったでしょう。今でこそ、肥大症やがんなど、前立腺の病気にかかる確率が非常に高くなりましたが、それは人生100年時代ならではの現象です。前立腺の病気が加齢に伴って増えるのは自然の流れといえます」(大堀さん)
年を取ると前立腺が大きくなり、尿道が圧迫され、尿の出が悪くなってしまう。これが前立腺肥大症だ。尿が出きらずに膀胱に残ってしまい、「夜中にトイレに行く回数が増えた」「オシッコのキレが悪くなった」など、若いころは考えもしなかった排尿障害が起きる。
