「姿勢」が、肩こりや腰痛の原因になることを知っている人は多いだろうが、足の痛みや高血圧、誤嚥性肺炎まで、全身の様々な不調・疾患の原因になることをご存じの方は少ないかもしれない。これまでに掲載した人気記事から、姿勢と様々な病気・不調との関係について知っておきたいことをコンパクトにまとめた。
テーマ別特集 肩の痛みから高血圧まで、「姿勢の崩れ」は様々な不調の原因に
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コロナ禍の影響もあり、家やオフィスにこもって、毎日長時間パソコンやスマートフォンに向かう生活を続けている人は多いだろう。しかし、前かがみや猫背、脚組みなどの悪い姿勢を長時間続けると、体に様々な悪影響が出る。
よくあるのは、肩こりや腰痛、足の痛みなどだが、こうした不調の原因になるのは、背骨の「S字カーブ」の崩れだ。
人間の頭の重さは5~6kgもあり、その重量が常に体に加わっているが、その衝撃を分散する仕組みが、背骨のS字カーブ。カーブを描くことで重心のバランスをとっている。
しかし、パソコンやスマートフォンを使うときは前かがみになりがちだ。そして、前かがみの状態が習慣化すると、背中側の筋肉が引っ張られ、反対にお腹側の筋肉は縮み、体の重心がずれて歪み・ひずみが生じる。そうして次第にS字カーブが崩れ、首や腰など特定の部分に負荷が偏り、痛みやしびれが生じるのだ。
以下に、姿勢の崩れと関係のある、それでいて姿勢との関係について意外に知られていない不調や疾患について、コンパクトに紹介していく。
中高年の「肩トラブル」は「姿勢の崩れ」と密接に関係
肩が痛くて上がらない、背中に手が回らない…40代、50代になると、徐々に体のあちこちにガタがきて、ちょっとした動きで関節や筋を痛めてしまうことがある。その1つが「肩」。
肩が痛い、腕が上がらないなどの「肩」トラブルが特別な運動はしていないのに起きた場合、実は全身の「姿勢」と密接に関係していることが多い。姿勢が崩れると、背中が丸くなって肩が前に傾き、肩甲骨が本来の位置から外側へ、体の前方へとずれてしまい、スムーズに動きにくくなるのだ。
肩関節診療に詳しい船橋整形外科病院スポーツ医学・関節センター長の菅谷啓之さんは、「年をとって体が硬くなり悪い姿勢が定着すると、肩甲骨がスムーズに動きにくくなり、腕が上がらない、痛みが出る、といったトラブルを起こしやすくなる」と言う。
前述した通り、本来、人間の背骨はゆるやかなS字カーブを描き、骨盤はまっすぐに立っている。しかし、中高年になり全身の筋肉が落ち始め、筋力が低下すると、頭部の重みを支えきれなくなり、骨盤が後ろに傾き始める(後傾)。それに伴って背骨(胸椎 きょうつい)は丸くなり、バランスをとるために頭が前に出てアゴを突き出すような姿勢になる。そうなると、肩全体が前方へと傾き、肩甲骨も本来の位置から外側へ、前方へとずれてしまうのだ(*1)。
筋力のある若い人であれば、少々姿勢が崩れても、シャキッと背筋を正せばすぐにニュートラルなポジションに戻すことができる。だが、筋力が落ちている中高年の場合、悪い姿勢は定着しやすく、肩甲骨の位置も戻りにくくなっていく(図1)。すると、その状態を維持するために肩甲骨の周囲の筋肉が緊張して、肩甲骨の動きは悪くなる。
