男女とも非常に多くの人が悩んでいるのが「腰痛」だ。ぎっくり腰のように、痛みは強いが原因が分かりやすいものは対策しやすいが、問題なのは原因がはっきりしない、「なんだか知らないけど、いつの間にか…」始まってしまう「慢性腰痛」だ。長年にわたって慢性腰痛で悩む人も少なくない。だが、この10年で腰痛治療は大きく変わった。本テーマ別特集を読んで、最新情報をアップデートしておこう。
テーマ別特集「腰痛」
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腰痛は非常に多くの人が悩んでいる症状だ。厚生労働省が行っている国民生活基礎調査では、病気やケガなどの自覚症状があると答えた人のうち、男性で最も多かったのが「腰痛」だった。女性でも「肩こり」に続いて2番目に多い。
日経Goodayでは「腰痛」の最新事情を、様々な記事でお届けしてきてきた。本テーマ別特集では、このうち、「慢性腰痛の原因」「すぐに病院を受診したほうがいい典型的なパターン」「慢性腰痛に効くストレッチ」「腰痛を防ぐ方法」についてのエッセンスをコンパクトにまとめてお届けする。
(※関連記事の一覧は最終ページに紹介しているので、より詳しく知りたい人はそちらもご覧ください)。
腰痛の85%は「原因不明」だった!
腰痛は、世界的に見ても約40%の人が一生に一度は経験するという普遍的な症状だ(*1)。「先進国では特に多く、8割の人が腰痛を経験するという報告(*2)や、日本では約2800万人もの人が腰痛に悩んでいるという推計(*3)もあります」と話すのは、東京大学医学部附属病院(東京都文京区)リハビリテーション部の理学療法士・山口正貴さんだ。
腰痛は大きく「急性」と「慢性」に分けられる。重い荷物を持ち上げようとして起こすぎっくり腰(急性腰痛症)などが急性腰痛、3カ月以上痛みが続いているものが慢性腰痛と定義されている。
原因がはっきりしている急性腰痛は、痛みが強い割に怖くない。急性腰痛の86%は2週間以内に自然治癒するという報告もあり(*4)、ぎっくり腰も、基本的に放っておけば治るという。
問題は、いつまでもじわじわと痛みが続く慢性腰痛の方だ。痛みがある以上、何らかの原因はあるに違いない。実際、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、圧迫骨折、がん、尿路結石など、明らかな異常があって慢性腰痛が起こることもある。しかし意外なことに、原因(異常部位)がはっきりしている腰痛は全体の15%程度しかない。つまり85%の腰痛は原因不明なのだ。この原因不明の腰痛を医学的には「非特異的腰痛」と呼ぶ。
「変性やヘルニアなど、椎間板に何らかの異常がある人は40~60歳の6割。60歳以上になると9割に達するといわれています(*5)。がんなどの可能性もあるのでレントゲンやMRI(磁気共鳴断層撮影)を使った画像検査はした方がいいですが、検査して椎間板に異常があったとしても、それが腰痛の原因であるとは限らないのです」(山口さん)
*2 Yao and Artusio‘s Anesthesiology: Problem-Oriented Patient Management 2011.
*3 吉村典子ほか. 膝痛・腰痛・骨折に関する高齢者介護予防のための地域代表性を有する大規模住民コホート追跡研究. 平成24(2012)年度厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究.
*4 Deyo RA, et al. Spine (Phila Pa 1976). 1987 Apr;12(3):264-8.
*5 Boden SD, et al. J Bone Joint Surg Am. 1990.
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