“老けにくい”体にしたいというのは誰もが共通に思うこと。その老化の原因の1つとして最近注目されているのが「糖化」だ。この糖化、見た目の老化はもちろん、体内の血管や内臓、骨、関節などの機能低下にも密接に関わっているという。糖化リスクを遠ざけ、老化を遅らせるためには何を実践すればいいのだろうか。今回のテーマ別特集では、糖化の健康への影響から、その対策までを一挙に紹介しよう。
テーマ別特集「老化の元凶『糖化』の防ぎ方 」
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人間、歳をとれば、筋力や運動能力は徐々に減退し、骨や臓器などが徐々に衰えていく。肌にも皺(シワ)が増え、弾力性がなくなってくる。こうした老化による衰えは抗いがたいが、できればこの衰えを少しでも緩やかにしたいもの。
人生も半ばを過ぎると、見た目はもちろん、筋力や体力などにも個人差が出てくる。なぜ、同じように歳を重ねてきたのに、若く見える人と、老けて見える人がいるのだろうか。もちろん、問題は見た目だけではない。筋肉、骨、臓器、血管など体の内面も同様だ。
老化を進める要因として、近年、「酸化」と並んで大きく取り上げられるようになったのが、「体が焦(こ)げる」などと言われる「糖化」だ。
糖化の専門家である同志社大学 生命医科学部 糖化ストレス研究センター チェア・プロフェッサー教授の八木雅之さんは、「近年の研究から、糖化は酸化と並んで、人間の老化を進める主因の1つであることが分かってきました。糖化とは、体内の余分な糖がたんぱく質と結びつき、たんぱく質が劣化する現象です。これが体内の組織の劣化や機能低下をもたらします」と話す。
この糖化は、肌の見た目はもちろん、体内の血管や内臓、骨、関節などの機能も低下させるため、さまざまな病気の原因になる。さらには、認知症との関係も指摘されているという。
加齢とともに糖化が進行し、体内の機能低下などが進むのはある程度仕方のないこととも言える。しかし、糖化が進みにくい食生活などを実践することにより、その進行を遅くすることは可能だ。そこで、本テーマ別特集では、糖化のリスクと糖化を防ぐ対策について一挙に紹介しよう。
そもそも糖化とは? 体に何が起こるのか
糖化による体の悪影響について触れる前に、糖化のメカニズムから解説しよう。
糖化(またはメイラード反応)とは、糖とたんぱく質が結びついて起こる現象のこと。身近な例で言えば、パンケーキを焼くと、表面がこんがりきつね色になるが、これが小麦や砂糖に含まれる糖と卵や牛乳に含まれるたんぱく質が結びついて起こる。これが糖化だ。
これが体内で起こると、全身の老化につながると八木さんは話す。「体内の余分な糖がたんぱく質と結びつき、たんぱく質を変性、劣化させていきます。ご存じのように、たんぱく質は、筋肉はもちろん、臓器や皮膚、血管などの重要な構成要素です。たんぱく質が劣化するということは、体の中のさまざまな部分が劣化し、機能低下することにつながるのです」(八木さん)
糖化反応が進むと、最終的にAGEs(糖化最終生成物)という物質が生成される。八木さんは、「AGEsは、糖から生成したアルデヒドとたんぱく質が結びつき、その後、複雑なプロセスを経て生成されます。生成過程もさまざまで、脂質やアルコールの代謝物から生成する経路もあります。AGEsは、論文に報告されているだけでも数十種類、実際には100種類以上あるとも言われています」と話す。
「AGEsはたんぱく質同士を結合させ、“悪玉架橋”という厄介な物質を作ります。コラーゲン線維を結ぶ本来の架橋結合に加えて、悪玉架橋が追加されると、組織の可動性やしなやかさ、弾力性が失われていきます。また、体内には、AGEsをキャッチするレセプター(受容体)が存在し、そのレセプターがAGEsをキャッチすると、炎症が引き起こされます」(八木さん)
